彼女たちの装備では不安だったので、ウェンデルで最低限のものを買い揃え、俺らは一
泊して体の疲れを取ってから、滝の洞窟へと向かった。
 一度通った所だから、あんまり迷う事はなかったけど、かの光の精霊がどこにいるのか
ー、なんてのはよくわからない。
 フェアリーの話によると、上の方にいるらしいから、とにかく上へ上る事へ。
「ふひーっ、ふひーっ、シャルロットバテまちた…」
 上り坂がつらかったか、早くもシャルロットがバテはじめた。
「…あのなー…。こんくらいの坂でバテんなよ!」
「私もバテた…」
 と言って、アンジェラまでもそこに座り込んでしまったのだ。んもー、女子供ってぇの
は!
 仕方なく、小休止を取る事にした。ごつごつした岩壁に背もたれて、二人はふへふへ言
っている。
「少し疲れが取れたら、また行くぞ。ずっとここにいるわけにはいかねえからな」
「もうちょっと待ってよー…」
 杖にかじりついて、アンジェラが恨みがましそうに言う。
「あのな。ここ、けっこうモンスター多いんだぞ。ジッとしてたらモンスターが寄り集ま
って来ちまう」
「わかってるけど…。もうちょっと待ってー」
 ……ったくぅ…。

 それから、さらに上に上る。気づいたんだけど、なんだか、ズシーン、ズシーンという
音がするんだよな。なんか、地響きしてるみたい…。
「…なんだろうな、あの音…」
「さあ?」
「そういえば、どこのだれだったか、こういう振動がするって言ってまちたねー」
 シャルロットが、倒したモンスターから金をあさりながらのんびり言う。
「でも、ウィルオウィスプなんて本当にいるのかしら?」
「本当にいるでちよ。ただ、このごろ見かけないとは聞いてまちけどね。もしかすると、
この振動に関係ある…」
 ズシーン!
 今度は、この振動がすぐ間近でした。な、なんだ!?
「近いわね…」
 緊張した顔付きで、アンジェラは杖をかまえた。
「あっちか?」
 俺は、振動のした方へ駆け出した。ちょっとせまいトコを通り抜けると、いやにだだっ
広いトコに出たのだ。そして、そこにいたヤツは…。
「ほよーっ、でっけーカニでちねえ!」
 シャルロットが思わず大きく口を開けた程に、ばかでけえカニがズシンズシン動いてい
るのだ。シャルロットの声に、ヤツがこちらに気づいた。
「キシャアアッッ!」
「あ、なんか怒ってるみたいでち。カルシウム不足でちかね?」
「いや、あのカラ固そうだから、それはねーと思うぞ」
「ちょっとぉ、んな悠長な事言ってるヒマなんてないわよっ!」
 アンジェラの言うとおり! いきなり、このでけえカニはブクブク泡をとばしてきたの
だ。
「うおっ!」
 なんとか避ける。その泡、地べたにつくとジュワーッとか言って地面を溶かしはじめた
のだ!
「ウヒョーッ! このカニの泡はものを溶かすんでちか! 厄介でちねえ!」
(デュラン!)
「んー!?」
 呼ばれて返事をすると、不思議そうな顔したアンジェラとシャルロット。どうやらフェ
アリーが俺に話しかけたんだな。フェアリーと話すって不便だよなぁ。
(あのカニの中にウィルオウィスプが封印されてるよ! あいつを倒さないと!) 
 ナルホド。そーゆーワケだったのか。それなら、コイツを倒すしかねえなあ!
「わかった! アンジェラ、シャルロット! コイツを倒すぞ! 俺が正面きって出るか
ら、お前らは横からたたけ!」
「…わ、わかった!」
 俺の指示どおり、彼女たちは横手に分散する。そこで、カニの注意が一瞬にぶった。今
だ! 俺は剣をカニ目掛けて振り下ろす。
 ガキィン!
「アグェッ!」
 かってぇー…。思わず腕がしびれちまったじゃねえか!
「デュラン、デュラン! 目玉なら柔らかそうよ!」
 アンジェラの声が飛ぶ。あ、そっか。カタい甲羅よか、柔らかな目玉ってコトか!
 と、いうわけで、俺は右目を、アンジェラたちは左目を集中的に攻撃した。
「であああっ!」
 渾身こめて、ヤツの右目を刺す!
「キシャオウッ!」
 さすがに効いたらしく、剣さしたままの俺にかまわず暴れだした!
「どわあおおううっ!」
「キャーッ!」
「ひえーっ!」
 く、クソッ! な、なんとかこの目玉から剣を抜いて…。
 カニに足をかけ、思い切って剣を引き抜く。勢い余ってコロコロ転がってしまった。
「デュランしゃん! 効いてるみたいでち!」
 振動で立ってられないのか、はいつくばったシャルロットが叫ぶ。よっしゃ、もういっ
ちょぶっさせば…!
 スキを見計らってー…。
「うおおおおおーっ!」
 突っ込めぇーっ!
 ザシュウッ!
 見事、俺の剣はヤツの目玉を貫いた! 目玉から白い液体がこぼれる。俺はすぐさま引
き抜いた。
「グァ、オウ…」
 口のあたりがしばらくパクパクさせていたが、やがて、立ってられなくなったのか、足
をクタッとさせて、ズゥウンッと地響きを立てる。そして、動かなくなってしまった。
「や、やったのか…」
「そ、そうみたいね…」
「やぁなカニでちた!」
 みんな、緊張も抜け、ホーッと安堵の息をついている時だった。このカニがにわかに光
出したのだ! ま、まさかまだ生きてたか!?
 考えた事はみんな同じだったらしく、また緊張が走り抜ける。
 やがて、光は小さな白い火の玉みたいなのが浮かびだして、こっちにふよふよやってく
る!
「チッ!」
 それぞれの手に武器をもち、火の玉をにらみつけた時。
「うぃっス。どーも、ボクがみなさんお探しのウィルオウィスプっスよ!」
 と、いやに軽い口調でしゃべり出したのだ。思わず顔を見合わせる。
「いやー、このカニね、フルメタルハガーって言うんですけど、コイツの体内に、ボク、
閉じ込められてたんスよ。助かったっス!」
 フェアリーの言った通りだが…。…精霊って、みんなこんな感じなのか? 俺が想像し
てたのとだいぶ違うが…。
「あー、それはそうと。話はさっきフェアリーさんからテレパシーで聞いたッスよ。いや
はや、大変なコトになっちまいましたねえ。ボクたち精霊はマナがないと存在できなくな
っちゃいますからね。もちろん、協力させていただくっス!」
 力強くそう言ってはくれるのだが。どーにも頼り無いような気がするのは俺だけか?
「あ、ウィスプさん!」
 キラリンっと、フェアリーが姿を現す。慣れたつもりではいるが、やっぱり驚く。
「あの、光のマナストーンはどこに?」
 ああ、そういえば司祭のジーサンがマナストーンどうとかって言ってたナ。
「その、マナストーンはですね…。ちょっとここからじゃ行けないッス…。光の古代遺跡
ってトコにあるんスけどね。そこへ通ずる道ももうなくなっちゃって…」
「そう…。でも、あなたが仲間になってくれるだけでも大助かりだわ!」
「うへへへ! ボク、頑張るッス!」
 なんか、やっぱり頼りないような…。
 その後、ウィルオウィスプは、俺らの周囲をふよふよ飛んでいたかと思うと、スウ
ッと消えた。どうやら、これで仲間になった、というヤツらしい…。
「アンジェラ、これであなたも魔法を使えるようになるハズよ!」
「ほ、本当!?」
 疲れて座っていたアンジェラが急に顔を輝かせた。シャルロットも顔をあげる。
「そのかわり、光の精霊魔法だけどね…」
「ううん、それでもいい! 私、ちょっとやってみるね! 呪文は覚えてるんだ!」
 と、早速ブツブツ呪文を唱えはじめる。魔法、かあ…。剣と魔法、剣の方が優れてると
は思いたいんだけど、あの一件から、どーにもなあ…。
 なんてボンヤリ考えていると、アンジェラが杖を振って、その杖が俺の頭に当たった!
 ゴチン!
「いてぇっ!」
 と、同時に光のボールが壁にむかって突っ込んでいく。
 ドッカァーン!
 見事、壁が崩れた。でも俺は、んなことよりも、杖で殴られた方が…。
「おまえなぁ!」
「きゃ、は、あははははっ! やったー! 私にも魔法が使えるーっ! やったー!」
 怒鳴る俺を無視して、喜び跳びはねる。しまいには俺の手をとって踊り始めた。
「あ、ちょ、おい、アンジェラ!」
「魔法が使える! 魔法が使えるゥーっ!」
 ダメだこりゃ…。
 アンジェラが元に戻るまで、かなりの時間がかかった。よっぽど魔法が使えたのが嬉し
かったらしいなぁ…。

                             

 さっき、アンジェラがあけた壁穴がちょうど近道になっていて、さて、戻ろうかなんて
思っていた時だった。
「動くな!」
 背後からの声に、ギクリとする。振り向くと…。そこでは、あのジャドで見かけた図体
のデカい獣人たちが、アンジェラとシャルロットをつかまえて立っていた。
「てめぇは!」
「おまえらのおかげで、結界が解けた。礼をさせてもらおうと思ってな」
「なんだとっ!?」
「おっと、この女やガキがどうなってもいいのか?」
「デュラン!」
「デュランしゃん!」
 アンジェラとシャルロットの声がハモる。クッ…。くっそー…。
「やっちまえ!」
「おう!」
 俺が手だしできないのをいいことに、獣人たちは、俺をよってたかってタコ殴りに。
 ちっ、ちくしょ、じゅうじん、たち、めぇーっ…。
 薄れ行く意識の中、俺はかすかにフェアリーの声を聞いたような気がした。


 う、うっ…。
 ぼんやり、マブタを開けると心配そうなアンジェラとシャルロットが目に映った。
「…あ、…あれ…?」
「あ、気が付いた!」
「デュランしゃん、だいじょぶでちか?」
 俺が目を覚ますと、二人とも、俺をのぞきこんでいた。……確か、俺…、獣人たちにタ
コ殴りにされたんだよなぁ…。でも、体中あんまり痛くないぞ…。
「デュラン、平気? どっか痛んだりしない?」
 珍しく、アンジェラが優しく俺に問いかける。
「う、うん…。どこも痛くねえぜ」
「シャルロットの回復魔法が効いたんでちね!」
 エッヘン、と胸をはるシャルロット。回復魔法?
「あのね、ウィスプが仲間になってから、私が魔法使えるようになったでしょ? それと
同時にシャルロットも使えるようになったのよ」
「…へー…、そうだったんだ…」
 だてにあの司祭の孫じゃねえってか。
「ところで、ここは?」
「私も気を失ってたんで、よくわからないんだけど、どっかの牢屋みたいよ」
「なんだってぇ!?」
 俺は慌てて立ち上がって、周囲を見渡す。頑丈そうな鉄格子がガッチリはめ込まれてる
のが目についた。
「げーっ! なんだこりゃあ!? くっそー!」
 ガンガン鉄格子をたたいてみるが、全然開きそうもない。チックショー、ついてねえな
あ!
「おーい、そんなに騒ぐと体に良くないぜー」
 いやに軽い口調で、どっかから声が聞こえてくる。どう考えても男の声で、アンジェラ
たちのものとは思えない。
「? どっから声がしたんだ?」
「コッチコッチ!」
 ふと見ると。隣の鉄格子から手がはたはたふられている。
「……だれだ? おまえ…」
「どうしたの?」
 どやどやと、アンジェラたちもこっちにやって来た。
「んーっと、俺はホークアイって言うんだ。ところで、君たち随分長い間気を失ってたみ
たいだけど平気なのかい? だれかうめいてたようでもあるけど…」
 後ろの二人の視線が俺に集中する。俺がうめいていたのか…。
「と、ところで、ここはどこだ?」
 隣のホークアイという男の手だけを見つめる。
「ここはビースト兵に占領されたジャドの地下牢さ。俺もちょっとドジっちまってな。こ
のザマさ。ま、こんな牢屋どうって事ねえけどな。もうちっと待ってくれれば、一緒にこ
こから出してやるよ。そろそろチャンスだと思うんだ…」
「チャンス?」
「シッ! 見張りがくる。まぁ、見ててくれ…」
 すると、ホークアイの言うとおり。見張りと思われる獣人が肩をいからせてこちらにや
って来た。
「おとなしくしてろよ!」
 エッラそーにそう言った時だった。
「ちょっと、キミキミ。見てみたまえよ、このカギ! 開いちゃってるぜー?」
 なんだかシャルロットみたいな口調だなぁ…。
「なに!? あ、本当だ! どうして…」
「なぁに簡単なこった。ちょっと、そこに立ってみなよ」
「こうか?」
「そうそう。それで、いいかい? ここをこうして…。こうするとだ!」
 なにやらあちらでガチャガチャやってるみたいだが…。
「おお!」
「んじゃま、しばらくそこに入ってて!」
 ドガッと蹴る音と、ガッチョンと扉を閉める音が聞こえた。
「ああっ!? てめえ! だましやがったな!」
「引っ掛かるそちらが悪いのさ! こんなカギ、この俺様にかかっちゃあ、どうってこと
ねえんだよ!」
 悔しがる獣人をさんざん馬鹿にすると、スッキリした顔でこちらにやってきた。
「ちっと待っててな」
 どっかからか針金を取り出して、牢屋のカギをカチョカチョやらしていたが、すぐにカ
チンとカギを開けてしまった。おお、見事!
「やあ、助かったぜ」
「ありがと」
「ありがとしゃんでちー」
「なんの、なんの。で、君ら、これからどうするつもりなんだ?」
 このホークアイって男。どっかで見た事あるよーな気がするんだが…、気のせいだな。
美形系の顔で、スラリと全体的に細い感じ。年齢は俺とそう変わらないと見た。
「どうするって…」
 俺がアンジェラを見ると、彼女はちょっとあきれた顔をして、そして代わりに喋ってく
れた。
「とにかく、こんな危険なトコから脱出するのが先決だわ。占領されちゃってるんじゃあ、
身動きできないもの」
「そうだな。じゃ、港まで一緒に行こう。獣人達がウェンデルを侵攻してる間の、警備が
手薄になる時を見計らい、マイアまで脱出するための船を出すって、俺が捕まる前に町の
連中が話してるのを聞いたんだ。ウェンデル侵攻って、今、真っ最中なんだろ? あの光
の司祭が放っとくわけないし、もう、戻ってくるかもしれない。あんまり時間がなさそう
なんで、急いだ方が良いみたいだ」
「そっか。んじゃま、行くか!」
「おう。それはそうと、君たち、なんてーの?」
 ああ、そういえば自己紹介はしてなかったな。
「あ? ああ。俺はデュラン、こっちの女がアンジェラ、ちっこいのシャルロットだ」
「ちっこいのとはなんでちか!」
 シャルロットがブフーッと頬をぱんぱんにふくらませたが、今はかまってやる余裕はな
い。
 廊下の突き当たりに投げ出されている荷物やら武器やら手にとると、俺たちはジャド脱
出のために、港まで走りだした。
                             
 途中、変身した獣人たちが襲いかかってきたものの、強行突破!
「うおおおおおおっっ! どぉけどけどけどけどけぇいっ!」
 剣をぶんぶか振り回し、蹴散らし走る!
「猪みたいなカレだねえ…」
「役に立つからいいじゃない?」
「力だけが取り柄でちもんねぇ」
 後ろの方でのんたらしゃべくってるのがちょっと気になったが、乗り遅れては大変なの
で、あえて無視する事にした。
 港まで行くと、ラッキー! 船がまだ残ってる。
「おおーい、俺たち、それに乗るぜっ!」
 声をかけて、桟橋を走り抜ける。
「早く早く! もう出航なんだ!」
 なんとか、全員乗りきってから、桟橋があげられて、無事乗る事ができた。ふへぇー…。
「みんないるなー?」
「いるでちー」
「いるわよ」
 声をかけると、ちゃんとかえってくる。
「あー、ところでデュラン、だっけ?」
「あん?」
 ホークアイが俺に話しかけてくる。
「君たち、パーティ組んでるワケ?」
「パーティ…」
 そういえば、そんな風に考えた事なかったな。
「……やっぱ、組んでるって言うのかな?」
「…言うんじゃない?」
「シャルロット、おなかへりまちたー」
「たぶん言うよ。うん」
「………………」
 俺達の反応に、ホークアイはあきれた顔を見せた。



 ザザザザ…、ザザザザ…。船が波をかきわけ、海の上をすべってゆく。風がちと寒い。
ジャドから脱出する人は少なくなくて、今はみんな寝静まってるんじゃないかな。
 俺たちなんかは、最後の最後に来たもんだから、部屋なんてなくてね。仕方なく、甲板
で毛布なんぞ借りて寝そべっている。俺はなんだか眠れなくて、ボーッと夜空なんか眺め
ていた。
「…だいぶ時間を無駄にしちゃったわね…」
 いきなり、フワッとフェアリーがでてきた。
「………どへぇっ!?」
 寝ぼけ眼のホークアイが、フェアリーを見たとたん、大きな声をだして驚いた。
「まあまあ。コイツ、フェアリーってんだよ。まあ、危ないモンじゃないが…」
「ヘンなものでもないからね!」
「……………」
 前の事をまだ根にもってたか、俺の話し途中に、かぶせるように言ってきた。
「あ、ああ! あんたの事だったのか! 光の司祭が言ってたフェアリーに取り付かれた
とかいうヤツは。いやー、探しましたよ。君たちを。その途中で獣人兵につかまっちまっ
てさ」
「…っていうと、なに、あんたもなにかワケアリなの?」
 あ、アンジェラ。起きていたのか。でも、シャルロットの方は完全に寝ているらしく、
起きる気配はない。
「…まーな…。あんまり大きな声じゃ言えねーんだけど、俺、ナバールの盗賊なんだ…」
「へー、あのナバールの」
 ナバールっつうのは砂漠に住む盗賊集団なのだが、有名な義賊でもあるのだ。
「ああ…。ナバールを知ってるなら、俺らの仕事内容もわかるだろ? 決して貧しい人か
らは盗まず、悪どく金儲けしてるヤツらだけをねらう! それが俺たちのポリシーでもあ
ったし、誇りでもあったんだが…」
 ホークアイは言葉をきって、顔をうつむかせた。
「最近じゃ、それをなくして、王国まで建国しようなんて、俺らの首領フレイムカーン様
が言い出しちまってな。以前のフレイムカーン様じゃ、考えられない事ばっかりさ。原因
は、裏でイザベラって女が首領を操ってたんだ。そこを、俺は親友のイーグルと突き止め
たまでは良かったんだが…。ヤツは、イザベラはイーグルを殺して、その罪を俺に着せや
がったんだ!
 それだけじゃない。イザベラはイーグルの妹ジェシカに、目に見えないJ死の首輪Kっ
ていう呪いのアイテムをかけやがった。彼女に真実を伝えたら、イザベラを殺したら…、
すぐにでも死んじまうような忌まわしい呪いさ…。俺、もうどうしていいかわかんなくっ
てよぉ…。それで、ナバールを脱走して司祭殿に相談に来たんだ…」
「ふーん…」
「なあ、フェアリー。マナの女神様は、俺の願いを聞いてくれると思うか?」
 すがるように、ホークアイはフェアリーを見る。
「ええ。古代呪法と言えども魔法の一種よ。女神様にかかれば、そんなもの簡単に解いち
ゃうわ」
「そっか…。なぁ、俺もあんたらの仲間にいれてくれ。頼む!」
 パンと手を合わせ、頭を下げて必死に懇願するホークアイ。俺は、アンジェラと顔を見
合わせた。
「…いいよな? 盗賊っつったら、いて便利だし」
「そーなの?」
「そーじゃねーのか?」
「……………」
 心配そうに、俺たちを交互に見つめるホークアイ。
「なんにせよ、あんたもワケアリみたいだしな。いいぜ、一緒に行こう」
「ひゃっほう! 良かったぁ…。…改めてだけど、よろしくな!」
 こうして。ホークアイも仲間に加わる事になった。
 みんな、色々事情をかかえているようだ。そんなヤツらばかりっていうのは、俺がフェ
アリーに取り付かれた事と関係あるのかな。
 ま、いいか…。
 フェアリーやみんなの目的に付き合うってのも悪くないだろう。それで俺が強くなれる
ならそれでいい。
 俺はそう一人でうなずくと、満点の夜空を見上げた。
った…。

                                                             to be continued...