「…ところで、デュラン。あんた、さっき、『も』ワケアリって言ったわよね。あんたも何
か旅に出なきゃなんない理由があんの? 差し支えなかったら聞かせて」
「う、うん…」
 俺は、歩きながら喋り始めた。自分がフォルセナの傭兵であること、アルテナの魔導師
に敗北したこと、強くなるために、旅に出た事なんかをかいつまんで話して聞かせた。
 今まで黙って聞いてたアンジェラは、不意に口をひらいた。
「…ねえ、その魔導師って、もしかして、ウチの紅蓮の魔導師の事かしら?」
「……ウチの? ウチって、おまえ…」
「…あのさ、私、その魔法王国アルテナの王女なのよ」
「はあ!?」
 な、なんだよそれ! んな話…。
「本当よ! 本当なんだから。その紅蓮の魔導師、アイツ、私と同じ、魔法がてんでダメ
で、魔法の先生に怒られてばかりいたような男だったのに…。いきなり、すごい魔力持っ
ちゃってさ。王女様である私を呼び捨てにしたりするのよ!」
「ふぅーん…?」
 いきなり、すごい魔力を…? そんなこと、あるんだろうか…。
「アイツが…、アイツがお母様、つまり理の女王って呼ばれてる人なんだけど。そのお母
様の側近になったの。それから、お母様、ますます冷たくなっちゃって…。…私に…、私
を、マナストーンの触媒に使うって言って………」
「……それがどうかしたのか?」
「バカ! わかんないの!? 私に死ねって言ってるのよ! マナストーンの力を解放させ
るためには、人の命を犠牲にしなきゃなんないのよ! その犠牲に…、私に………なれっ
て…」
 そこまで一気に話して、そして、アンジェラはうつむいてしまった…。その様子から、
本当の事らしかった。
「………そっか…。スマン…」
 それから、なんだか気まずくなっちゃって、話もそんなにしないまま洞窟を進んだ。
 この洞窟、暗かったのは最初だけで、上の方から光が漏れてて実はけっこう明るい。カ
ンテラも必要ないみたい。ここ、かつて人がたくさん通った後はあるんだけどね。モンス
ターが出るようになってから、人が通らなくなったらしく、すたれた感じがした。
 途中途中、モンスターが俺らに襲いかかってきた。ケド、そんなに強いモンスターじゃ
ないし、俺が斬り逃しても、今度はアンジェラが杖で叩いてくれたりして、やっぱ一人い
ると旅って断然違うんだなって思い知らされた。
 ただー、アンジェラのヤツ、あの杖を振り回す時がなんとなくへっぴり腰なのが気にか
かった。けど、しゃーねーか…。
 滝の音がして、随分明るい場所があるなーとか思ってると、滝の音にまぎれて悲鳴が聞
こえた。
「キャーッ! キャーッ! だれかぁーっ!」
「…悲鳴かな?…」
「悲鳴でしょ」
 どうやら聞き違いではないようだ。俺らが慌てて悲鳴の方へ向かうと、上から光と水が
降り注ぐ滝の横に橋がかかっているところに出た。ここから悲鳴が聞こえるんだが…。
 よく見ると、女の子が橋の縁に引っ掛かってキャーキャーわめいている。
「大変だあ!」
 駆け寄って、その女の子をぐいっと引き上げる。ちっちゃめの僧侶服。フワフワ金髪の
上に帽子という、随分可愛らしい女の子だがー…。なんだってこんなとこにいるんだ?
「ふ、ふぃーっ…、た、助かりまちたでち。ど、どーもありがとしゃんでちた…」
 まだショックから立ち直れないんだろう。肩ではあはあ荒い息をして、胸をおさえてい
る。
「…おまえ、どうしたんだ? こんなとこ、女の子一人でなんて危険だぜ?」
「そうそう」
 アンジェラが後ろでうなずいている。
「だ、だって…。シャルロット、ヒースが心配だったんでち、でちから…」
「ヒース?」
 俺はアンジェラを見たけど、彼女は首をふる。知らないみたいだ。
「ヒースは、神殿で神官をしていて、両親のいないシャルロットにとーっても優しいこー
せーねんでち。でも、アストリアに現れたとゆー、ブキミな光の調査のために一人、旅だ
ったんでち…。やぁーな予感のちたシャルロットはヒースのために旅だったんでち。
 ……ところが、ヒースはヘンテコなオヤジにさらわれちゃうし…。んでもって、滝の洞
窟には入れないし…。ところが、あんたしゃんたちが結界を解いてくれたんで、滝の洞窟
に入ったんでち…。でも、途中で道を間違えて、ホラ、あそこから落ちてしまったんでち」
 彼女が指さす先に、なるほど切れたような道がある。
「あんたしゃん達が来てくれなかったら、シャルロットは今頃…。あうう…なんて可愛そ
うなシャルロット…!」
 とか言って自分で悲観にひたって、泣き出してしまうのには困った。
「あーあー、わかったから、泣くなってば…。んで? おまえもウェンデルに行くのか?」
「シャルロットはウェンデルに住んでるんでち。でちから、行くんじゃなくて帰るって言
いまちね」
「そっかそっか。んまぁ、俺らもちょうどウェンデルに行く途中だし、この先一人じゃ危
険だろ。来いよ。送っていってやるからよ」
「ひょー、助かりまちた! で、あんたしゃん、なんでウェンデルに行くんでち?」
「ん? 光の司祭殿に会いに行くのさ」
「ありゃま! んじゃあ、あんたしゃん、このシャルロットを助けてじぇんじぇん損はな
いでちよ。その光の司祭って、シャルロットのおじいちゃんの事でち!」
「へえ!?」
 おいおい、本当かよ…。
「シャルロット、ウソはつきましぇん! コホン。あー、チミチミ。このシャルロットを
てーちょーにウェンデルまでお連れしなしゃあい」
 なんなんだ、この横柄な態度は…。ちっけえくせにまー…。けど、連れてくって言っち
まった手前、おいてくわけにはいかねーし…。
 シャルロットは、落ちた時、一緒に落としたと思われる荷物類を拾って、俺の手をぐい
ぐい引っ張った。
「しゃあ、行きましょ!」
 ……つ、ついていけん…。俺は、思わずため息をついた。



 ウェンデルはすっげーばかでけー都市だった。まあ、世界中の人々が集まって来るよう
な都市だから、これだけ大きいのもうなずけるけどね。
「んで、シャルロット。光の神殿ってドコなんだ?」
「ここを真っすぐ行くと、大通りに出るでち。そこを北に一直線! そーすれば光の神殿
でち」
 シャルロットの言うとおり、人々が行き交う大通りに出る。けっこう色んな種族の人も
いたりして、見ててあきない。
 露店なんかも出ていて、かなりのにぎわいだ。
「ふえー、それにしても大きいよなー…」
「デュランしゃん。よそ見してて迷子になりまちぇんようにね!」
「んなことなんねぇって」
 とかなんとか言ってたら、いきなり道間違えてたりして、恥をかいたりしたが。神殿目
指して歩いてると、神官服を着た人達が、たくさん見られるようになってきた。あっちに
もでっけぇ神殿らしき建物も見えるし。もうすぐだな。
「あ! シャルロットちゃん! どこに行ってたんですか!? 司祭様が心配されています。
すぐに神殿にお戻りください!」
 途中、神官らしい男が、シャルロットを見つけるなり、駆け寄って来た。
「だ、大丈夫でちよ! シャルロットは一人で戻れまち! それに、この人たちを神殿ま
で案内するんでちから! ちゃんと戻りまちから! ほっといてくだしゃい!」
「…そ、そうですか…。じゃ、早く戻って下さいよ…」
 どうやら、シャルロットが司祭の孫というのは本当らしいなあ…。

 光の神殿というもの、なるほどデカいトコだった。神官と見られる人々があちこちにい
て、みんなシャルロットを知っているようだった。
 俺らが中に入ろうとすると、シャルロットはなんだか入り口あたりでモジモジしている。
「どうしたの? 入らないの?」
 アンジェラが話しかけると、シャルロットは困った顔をして、
「黙ってでてきたから、きっと怒られるでち…。シャルロットここで待ってる…」
「待ってるって言われても…」
 それじゃ、光の司祭の孫を助けたっていう証拠なくなっちまうじゃねーか…。でも、テ
コでも動きそうになかったし、確かに怒られるってあんまり気持ちのイイもんじゃねえか
らな。仕方ないって事でアンジェラと二人で司祭をたずねる事にした。
 司祭がいる部屋への道順は、赤いジュウタンが引かれてて、迷う事はなかった。神殿だ
けあって荘厳なイメージがする内部の造り。
 アンジェラとキョロキョロしながら入って行くと、ぞろぞろと人が並んでいる。うゲ! 
並ぶのかぁ…。
「並ぶんだったら、ヒモつけてでもシャルロット引っ張ってくれば良かったなぁ」
 そうすりゃ、特別扱いしてさっさと会えるかもしれなかったのに…。
「そうねー。どんくらいかかるんだろう?」
 一人、一人けっこうジックリ話してくれるらしく、時間がクソかかる。そのために、ち
ゃんと椅子とかあるんだけどさー…。どうにかなんねーかぁ、この待ち時間…。こんなと
こで待たされるなんてよー…。
 やっと俺らの番がきた時には、神殿に入ってからだいぶ時間が経っていた。
「次のかた、どうぞ…」
 穏やかな声に呼ばれて、俺たち二人は司祭がいるという部屋に。大きく広くて、真ん中
に司祭と思われるジーサンと、彼の後ろにたたずむバカデカイ女神像。
「…あなたがたに、マナの祝福がありますように…」
 穏やかに、そして優しく。なおかつ威厳に満ちた声はナルホド、司祭と呼ばれるだけの
ものはある。本当にあのシャルロットの祖父なのだろうか…。
「あのよー、俺は強くなりてぇんだ。誰よりも! クラスチェンジっつう方法知ってるっ
て聞いたから、教えてくれ!」
 しかし、このジーサン。俺をジッと一瞥して、そして小さな息をついたのも聞こえた。
「おぬしではまだ経験不足…。もっと経験を積んでからじゃな…」
「ゲーッ! 俺は今すぐ強くなりてぇっていうのに!」
 そんなんありかよ、せっかくここまで来たって言うのによ!
「マナストーンという名前くらい知っておるだろう。クラスチェンジとは、そのマナスト
ーンからエネルギーを借りて…」
「そーゆーかったりいことじゃなくってよぉ!」
「ちょっと、私にも喋らせてよ!」
 いきなり、ドンッとアンジェラが俺を突き飛ばした。わったた!
「ちょっとオジイサン! 私、魔法を使えるようになりたいのよ! そして、お母様に認
めてもらって…」
「おい、アンジェラ! 俺が話してる最中だったじゃねえかよ!」
「なによ、あんたのはもう終わったでしょ!?」
「これこれ…。いきなり痴話ゲンカなど始めるでない」
 困ったように司祭がそう言った時、俺の頭あたりから、フワッとフェアリーが姿を現し
た。
「ちょっと静かにして! 光の司祭様、私はフェアリー。マナの聖域から参りました。世
界からマナが減少し始めて、聖域のマナの樹が枯れはじめてるんです!」
 あ、ぬけがけ…。
「なんと! それは大変じゃ! マナの樹が枯れてしまったら、マナストーンに封印され
し神獣が目覚め、世界が滅んでしまう!」
 いきなり司祭のジジイの態度が豹変。慌てたようにフェアリーを見た。
「………なんか、大変そうだなー…」
 フェアリーって、そんな大変そうな事に巻き込まれてたんだ。
「なにを他人事みたいに言っておる! おぬしはフェアリーに選ばれし者。マナの剣を抜
かんといかんのだぞ!」
「はあ!? おい、フェアリー、そんな話、全然聞いてねーぞ!」
 そう言うと、フェアリーはすまなさそうな顔して、頭を下げた。
「ゴメンなさい…。マナの減少によって、私たちはだれかに取り付いていないと、生きて
られないの。あのとき、あなたにとりついていなかったら、今頃…」
「うーん…。ま、いいや。俺関係ねーし。んじゃ、今度はそこのジーサンにでもとりつい
てくれよ」
 俺がそう言うと、ジーサン、大きくため息をついた。
「それができれば苦労せんわい。フェアリーは一度とりつくと、宿主が死ぬまで他の人に
とりつく事ができんのだ…」
「なんだってぇ!?」
 そりゃねえよお!
「じゃ、あんたが死ねば良いんじゃない」
 アンジェラが隣でとんでもない事を言う。
「縁起でもない事言うなっ! ちょっと待ってくれよ、俺はだなぁ…」
「紅蓮の魔導師に打ち勝つ事が目的なんでしょ? マナの剣を手に入れれば、あなたは最
強の戦士にだってなれるんだから」
「へ? そ、そーなのか?」
 大きく、そして自信タップリにうなずくフェアリー。
 そ、そーか…。なら、そーすればいいのか…。そーすれば、俺はあの憎き紅蓮の魔導師
に勝つ事ができるのか…。それなら、それでいいか。
「そっか…、それならそうと早く言ってくれよ。で、俺はどうすればいいんだ? そもそ
も、そのマナの剣ってなんだよ?」
「マナの剣というのはな、全精霊を司る、古の象徴なのじゃ…。マナの剣は、マナの女神
が世界の創造に用いた『黄金の杖』の仮の姿。その剣を手にせし者は世界を支配しうる力
をも与えられるという話じゃ…。その剣は、今もなおマナの樹の根元にひそかに眠ってい
るそうだがな…」
 俺の問いに、司祭のジーサンがこたえる。
「その剣を、マナの樹が完全に枯れる前に抜けば、マナの女神様が眠りからお目覚めにな
り、世界を救って下さるじゃろう…。その者を探すべく、フェアリーは、聖域から来たん
じゃろう?」
「ええ、そうです」
 頷くフェアリー。…その者ってのが俺なのか?
「…それって…、けっこう大変な役目なのか?」
 俺がそう言うと、司祭のじいさんを俺を一瞥した。
「…決して易しい役ではない。…しかし、やりがいがあるのも確かじゃろうな。女神様に
会えば、どんな望みもかなえて下さるじゃろうし…」
 ……。なんか、えらい役目なわりには選ばれ方がいい加減なような気がするが…。でも、
どんな望みもかなうのか。…面白そうじゃねぇか…。
「で? その聖域ってトコにはどうやって行くんだ?」
「その…、私には、聖域の扉を開くまでの力がもうないの…」
「……それで、俺にどーしろってんだよ?」
「……いや、その…」
 口でごにょごにょ言ってるフェアリー。けっこーコイツも無責任だよなぁ。
「…世界には神獣が封印されしマナストーンと呼ばれる石が8つ、あってな。これがエネ
ルギーポイントとなっているんじゃ。これらマナストーンのエネルギーを解放すれば、聖
域と現世をつなぐ聖域の扉が現れるんじゃが…」
「でも…その方法は…」
「さよう。これは、古代魔法の一つで、今では邪法となっておる…。マナストーンのエネ
ルギーを解放した時の力は絶大でな。昔はコントロールする事も可能だったんじゃが、そ
のエネルギーをめぐり、利権をとりあう国々で戦乱が起きてな。神獣以来の危機を迎えた
そうじゃ…。かろうじて生き残った人々は、同じ過ちを繰り返さないよう、この古代魔法
に人の命がかかる呪いをかけたんじゃ…。それが、今では邪法と呼ばれる所以じゃよ…」
 そういえば、アンジェラも、似たような事言ってたな。そう思って横を見ると、彼女は
うつむいたままだった。彼女が母親に殺されかけた理由っていうのが、この呪いのためら
しいからなあ…。しかし、なんだって母親が実の娘を殺そうとするんだろ?
「…でも、それじゃどーしようもねーじゃねーか」
「……手がない事もないのよ。マナストーンの近くには必ずその属性の精霊がいてね。彼
らの力を借りれば、私でも聖域への扉を開ける事ができる」
「そうか、その手もあったな…。おぬしたち、滝の洞窟は知ってるであろう? あの上に
は光の古代遺跡があって、そこに光のマナストーンがあるのだ。光の古代遺跡に行く事は
もうできないが、あそこの付近、滝の洞窟で光の精霊ウィルオウィスプがいるハズだ。
まず、手初めに彼の力を借りるため、そこに行きなさい」
 だてに歳はくってないようで、物知りである。
「……ねえ、フェアリー。私も一緒に行けば、私の願い、かなうかなぁ?」
 何か考え事をしていたらしいアンジェラが、口をひらいた。
「もっちろんよ。女神様は全知全能よ。なんの願い事でもかなえてくださるわ。それにア
ンジェラ、あなたなら精霊に会えばすぐに魔法を使えるようになるハズよ」
「そ、そうなの? な、なら私も行く! 一緒に行くわ! 改めてよろしくね、デュラン!」
 そう、俺の手をいきなり握ってきた。ちょっと、性格に問題があるようだけど、こうも
可愛いコに手を握られるというのは、悪くないもんだ。
「お、おう…」
「あ、ところで司祭さん。あなたにシャルロットっていう孫がいる?」
 アンジェラはすぐに俺の手を離し、司祭に話しかけた。
 おお、そうそう! 俺もちょっと疑わしかったんだよな。
「…いるが、それがどうか?」
「滝の洞窟の橋で引っ掛かってたわよ」
「なんと! あやつ、どこに行ったかと思ったら…」
 どうやら、ジーサンの様子のからみても、シャルロットはけっこう問題児らしい。まあ
なあ、あの性格みりゃあなあ。
「それで、あの子は今どこに?」
「うーん、怒られるのを心配してここに入って来なかったけど、ここらにいるのは確かよ」
「そうであったか…。まったく…」
 やれやれとため息をついて、机の上に用意されてある水を飲む。
「とにかく、俺ら、滝の洞窟に行ってくるわ」
「あ、そうだ! 光の司祭様!」
 言い忘れていた事があったのか、フェアリーが慌ててジーサンとこに飛んでいく。
「獣人たちがここ、聖都ウェンデルをねらっています。彼らは湖畔の村アストリアを滅亡
させ、ここを攻めにくるようです、どうぞお気をつけて!」
「やはりそうであったか…。すまぬのう、フェアリー」
「いいえ…。それでは、行って参ります」
 そう言うと、フェアリーはまた俺の中にフイッと入ってしまった。ちなみに俺は痛いと
もかゆいとも感じない。ただ、ちょっとヘンな気分になる。



 しっかし、大変な事に巻き込まれちまったようだなぁ…。
「…いいのか?」
 歩きながら、俺はアンジェラに話しかける。
「なにがよ?」
「これからの事だよ。俺もあんまり実感わかないが、かなり危険な旅になりそうだぞ…」
「…承知の上よ。どうせ、帰る所もないもの…。それなら、やるだけやって…ね。うまく
いけば堂々胸をはって帰れるし。なにもしないなんてイヤなの」
「…そっか…」
 チャラチャラしてるように見えるけど、けっこー中身はシッカリしてるみたいだ。
 神殿を出ようと、出口に差しかかった時、小さな女の子が俺らの前に立ちはだかった。
「シャルロット?」
「さっきの、おじーちゃんとの話を聞いてたんでち。あんたしゃん、ただもんじゃないで
ちね。お願い、シャルロットも連れてって! ヒースを探すの手伝ってほしいんでち!」
「…………どうする?」
 俺がアンジェラを見ると、彼女は首をふった。
「あのね、シャルロット。これからスッゴク危険な旅になるんだから、あんたみたいなお
子様に耐えられるワケないじゃない」
「イヤイヤー! シャルロットも絶対行くでち! ヒースを助けだすんでち! あんたた
ちがダメってゆっても、シャルロットはついていくでち! もう用意も書き置きもしちゃ
ったでち!」
 と、言ってどんっなに言い聞かせても、ついて行くとの一点張り。結局、俺らが根負け
してシャルロットもついて来る事になった。
「……いいのかなぁ…」
「…仕方ないわ。つらくなったら、ネをあげるだろうから、その時にでも帰ってもらうし
かないわ」
「そうだな…」
「なにしてるでちー、早く来るでちーっ!」
 でちでちこやかましい。でも、結果的にはこれで良かったんだろうと思う。結果的には
な。

                                                             to be continued...