ドックン…。ドックン…。
 さっきから鳴り響く心臓の音…。息もなんとなく荒い…。緊張しちゃダメだ…。
 俺は、そう自分に言い聞かせ、パン! とほっぺを両手で叩いて気合を入れる。
 うっしゃ!
「デュラン、出番だぜ。頑張れよ!」
 俺の背中をポンとたたいて、傭兵仲間が声をかける。俺は軽く左手をあげて、それに応
える。右手のブロンズソードを握り直す。
 …さぁ、決勝だ!
 剣を握る手にも力が入る。暗い通路を一歩、一歩、踏み締め歩く。そして、いきなり目
の前は光で真っ白になる。歓戦者の歓声や、拍手がわあっと広がる。
 今更ながら…、すげえ…。緊張するなというのに無理がある。…でも…!
 鎧で武装したブルーザーの姿が遥か先に見えるような気がする。あちらの台座には国王
陛下。気持ちがピリピリしてくる。
「剣術大会若手部門決勝戦! 両者前へ!」
 俺は、顔を上げて真っすぐ前を見る。そして、ゆっくりと中央まで歩いて行く。
「おめぇなんかに負けねぇぜ!」
 ブルーザーの言葉に、俺は親指を下げてみせる。それはこっちのセリフだ。
「始め!」
 レフェリーの声が響き渡る!
 いっくぜぇーっ!



 ……ふう…。
 俺は小さく息をついて、壁にもたれかかった。
 やっぱり優勝するって嬉しいよなぁ…。国王陛下から直に表彰もしてもらえたし…。
 まだ優勝の嬉しさの余韻に浸っちゃってるけど、今はそんな場合じゃなかったりする。
ここはフォルセナ城。そう、俺は夜警の真っ最中なのだ。
「なあ、デュラン。おまえ、なんで騎士への誘いを断ったんだ?」
 傭兵仲間のダニエルは、不思議そうな顔して俺に話しかけた。あの剣術大会に優勝して、
騎士にならないかっていう誘いがきたんだけど、俺は断ったのだ。
「んー? …何でって…、まぁ、なんとなく…」
「なんとなくなんかで、蹴るようなハナシなのかよ?」
 ダニエルの言うことはもちろんわかる。この城に勤められるのは、それが兵役であって
もフォルセナ国民にとっては名誉な事だし、騎士というのはさらに名誉で、なりたくても
なれる職業じゃない。
「なんとなく、まだだと思うんだ。まだ、早いような気がする。もっと強くなってからで
ないとって、思うんだ」
 どれだけ強くなればいいのか、俺はどこまで強くなれるのか。漠然とした妙な不安があ
った。口に出すような悩みでもないので、誰にも言った事なんかないけど。
「ふーん…。おまえも修行好きなヤツだな。俺だったら、そういう誘いがあったらすぐに
でものるんだけどなー」
 別に、騎士になりたくないわけじゃない。本当は今すぐにでもなりたい。でも、心のど
こかでまだ早いって思ってる。もっと強くなってからでも、きっと遅くないだろう。
「そろそろ交替の時間だけど…。俺、一応見回ってくるわ」
「ああ」
 ダニエルは設置されている時計をちらっと見て、そして、軽く右手をあげて見回りに行
った。
 弱い風が吹き抜ける。こっからだと町並みがよく見えるんだが、もう夜も遅いから、明
かりをつけてる家も少ない。
 あー、しかし、それにしても眠い…。昨日、よく寝てねーんだよなぁ…。
「ふ、ふああ…」
 い、いかん。眠っちゃなんねえ…。眠っちゃぁ…。しかし、俺はそうは思いながらもつ
いつい。壁にもたれかかって、うとうとし始めてしまった…。

 俺はうつらうつらとして、昔、まだ親父が生きていた頃の夢を見ていた。
 竜帝退治に出掛ける前の晩……。父さんは笑っていた…。
「デュラン。おまえは男の子だ。父さんのいない間は、おまえが母さんとウェンディを守
るんだぞ」
 父さんの大きな手が俺の頭に乗っかった。俺はその手が大好きだった。大きくて、力強
くて…。
 父さんの声を聞いたのは、それが最後だった…。父さんの背中を見送って…。
「…シモーヌ…、すまない。ロキは、私をかばって…、竜帝と刺し違え、深い谷に…」
 あのとき、陛下の声は震えていた。震える陛下の声を聞くのは、たぶんあれが最初で最
後…。
「シモーヌ、どうしてこんなになるまで、病気を放っておいたんだい!?」
 おばさんの泣きそうな厳しい声。まだ無邪気なウェンディを見ながら、俺はベッドに横
たわる母さんと、おばさんを見ていた。
「だって、私が病気だって知ったら、あの人に…、ロキにいらぬ心配をかけてしまう…。
私、あの人の足手まといには…なりたくないの…」
「バカだよ! あんたも…、ロキも……」
「…ねえさん…、ステラねえさん…。子供たちの事をお願い…。それだけが、心残り……」
「…わかった。安心しな! あたしが、ちゃんと面倒みるから」
「ありがとう……、……」
「シモーヌ…? シモーヌ! シモーヌ!」
 おばさんの声がだんだん遠くなっていく……。
 シュゴオォォッ!
 燃える音と、強烈に真っ赤な光に目が覚めた。な、なんだ!? 今のは……。
 ドゴォンッ!
 また爆発音!? 一体何が起こった!?
 俺は剣をもって光の方へ駆け出した。
「なっ!?」
 思わず絶句する。さっきまで話していたダニエルが血まみれになって横たわっているの
だ。
「おい、ダニエル! しっかりしろ! どうしたんだよ!?」
 しかし、呼べど叫べどダニエルは返事をしない。まだ体温は残っているけど…、もう、
二度と動かなかった。どういうやられ方をしたのか、ダニエルはひどい火傷を胸に負って
いた。
「くそっ! 一体なにが…」
 ハッとなって、辺りを見回すと、あちらこちらに仲間の死体が目についた。みんな、今
日の夜警についていたヤツらばかり…。本当、これはどういう事なんだ!?
 だれか生きているヤツはいないかと、仲間を見てまわったけど、だれも…。
 何があったんだ!? 一体誰が…!
 ふと、見上げると、紅いマントを羽織った男が不思議な動きで城内に入って行くのが見
えた。あんな怪しいヤツ、このフォルセナにはいない。そうか、あいつが…!
 ヤツがダニエルたちを殺したのか…! 許せねぇぇっ!
「待てっ!」
 ヤツを追いかけて、俺は駆け出した。
 階段を駆け登り、廊下を走り抜け、扉を開けると、紅いマントをはためかせた男が、横
たわる血まみれの兵士の前にたたずんでいた。
「…てんめぇ…!」
 俺の声に気づいて、振り向く。随分と美形顔だが、薄ら笑いまで浮かべているとは! 人
を殺すのがそんなに楽しいのか!?
「ほう…。まだ残っていたのか。…なんだ、身の程知らずにも、勝負を挑もうというのか?」
「なんだと!?」
 …こいつっ、馬鹿にしやがって!
 俺は剣を握り締め、ヤツを切りつけた。
 え?
 消えた? そんなバカな!
「ふふっ…」
 笑い声に振り向くと、なぜか後ろに紅マントの男が浮いていた。いつの間に!?
「どうした? その程度か?」
「貴様!」
 ヤツの笑い顔目がけて切りつける。が、その顔は霧のようにぼやけて消えた。
「んなっ…」
「はっはははは! こっちだこっち…」
 またもヤツは俺の後ろに。なんだこいつは!?
「フン…。所詮、その程度か。フォルセナというのも、たいしたことのない国なのだな。
これでは英雄王というのも、たかが知れている…」
「なにぃ!?」
 俺達だけでなく、国王陛下まで愚弄するとは! 絶っっ対に許せねぇぇっ!
「うらあっ!」
 ブンッ!
「ははははっ! どこを見ている!」
 クッソーッ!
「……さて、お遊びはここまでだ……ファイアーボールッ!」
 赤マント男の手のひらから赤い、炎の玉が現れたかと思うと、それはいくつかに分裂し
て、俺に襲いかかった!
 その迫り来る炎に、俺は思わず足がすくんでしまった。
 ドガァッッ!
 炎の玉は迷わず俺に襲いかかり、当たった途端、破裂して炎上し、俺を包み込む。
「ウワアッ!」
 あ、あちぃっ!
「熱いか…? それじゃぁ…アイススマッシュ!」
 そして、今度は大人が抱えるくらいの氷の塊を、空中から出したかと思うと、それを俺
に叩きつける。
 ガチガチンッ!
「グハッ!」
 いてぇ! 腹の底から何かが逆流してくるっ…。
 口から血が吐き出た。全身がビリビリするぐらいに痛くて、立ち上がる事ができない!
「死ね」
 ヤツが呪文を唱えようとした時だった。
「城内に侵入者が! 急げ!」
 たくさんの兵士たちの声と足音が聞こえた。
「…チッ。大勢来やがったか…。まあいい。こんなヤツらばかりなら、この国も長くはあ
るまい。命びろいしたな、小僧!」
「く、くそ…、ま、待ちや…が、れ…」
 薄れ行く意識のなか、かき消すように消えてしまったヤツの紅い、紅いマントが目に焼
き付いた。



 …ショックだった…。
 剣士としてのプライドもなにもかも、全部ズタズタにされて…。
 …初めて見た魔法に足がすくみ、動けなくなった自分のふがいなさが悔しかった。
 仲間の仇をうつ事はおろか、俺の剣はヤツにかすりさえしないという、情けない現実。
完膚無きまでの敗北という屈辱。
 魔法とは、そんなに凄いものなのか…。剣とはそんなにたいした事がないのか…。そん
なことって…。そしたら、そしたら俺は何を信じれば良い…? 今まで、剣がすべてだっ
たのに…。
「デュランさん、もうそこらへんにしといたら…」
「うるせえっ!」
 酒場のマスターを怒鳴りつけると、俺はまた、グラスに入った酒を見つめた。グラスの
中に、あの紅いマントがチラチラする。
 クソッ…。
 紅蓮の魔導師め!
 俺はグイッとグラスの中の酒を一気に飲み干す。体中が熱い…。クソッ…。くっそぉ…。
「ねー、デュラン…。そんな魔導師の事なんか忘れてさ、もっと楽しくやろーよ、ね? …
ねーってば」
 酒場の看板娘のリンダがそう、俺の肩を揺するが、そんなのにかまってられなかった…。
ただ、紅いマントをはためかせた、あいつが今も俺を嘲る…。
「おにいちゃん! まだケガが完治していないんだから、寝てなきゃダメだよ!」
 夜遅いというのに、いつの間にか妹のウェンディがそこにいた。でも、今はウェンディ
にかまっていられるような余裕はなかった…。
「おにいちゃんってば!」
「……………紅い…。紅蓮の…」
 グラスにチラチラと紅いマント…。俺はそれしか見えなかった。その時だった。
「……おにいちゃんのバカっ!」
 バシャッ!
 激しいウェンディの怒声と一緒に冷たい水をひっかけられた。
 見ると、目を潤ませ、怒った顔のウェンディが、空のコップを持って立っていた。
「……お兄ちゃんのバカ! 弱虫! なによ、一度負けたくらいでウジウジして! 情け
ないとは思わないの!? それでいいの!? なによ…なによ……バカ! お兄ちゃんのバ
カ! 大嫌い!」
 ウェンディ…。
 涙を我慢した、歪んだ顔で、ウェンディは走り去って行く。
 水をかけられたせいか、俺の頭がだんだん冷めてきた…。
「………………」
 濡れた顔もふかないで、俺はグラスの中に残された氷を見た。……このままで…、この
ままでいいわけないよな…。
「………マスター…。いくらだ…?」
「え? あ、ああ…、はい…」
 俺は無言で言われた額をサイフからつまみだすと、カウンターに投げてよこした。
 酒場を出ると、町は寝静まっていた。もう、夜遅いもんな…。
 どうすればいい…? 俺はどうしたらいい…? どうすれば、俺はあの紅蓮の魔導師に
打ち勝つ強さを手に入れられる?
 どれくらいそれを考えながら、町をふらついていたか…。ふと、気づくと占いババの店
の看板が目の前に見えた。
 俺は、占いなんて信じるタチじゃない。大体、あんな透明な玉っころ見てるだけで、人
の何がわかるって言うのか。
 でも、『悩み事の相談受け付けます』という謳い文句に、俺はワラにもすがる思いがした。
 階段を上がって、暗くて読めないけど、なにか看板のかかったドアを開ける。開けると、
薄暗い部屋のなか、ポツンとランプひとつだけがあって、そこに照らしだされた、かなり
不気味なバーサンが一人。きっとこのバーサンが占いババというヤツなんだろう。
「…なんじゃ、シケたツラしよってからに。いい若いモンがなーにをそんな顔しておる」
 ………この、ババア…。
「まあ、なんにせよ悩み事はあるみたいじゃがの…。どれ…。わしが占ってしんぜよう」
 そう行って、ババアはごにょごにょつぶやいて、水晶玉に手をかざす。水晶玉が一瞬弱
く光ったように見えたのは気のせいか。
「よいかの? 人の運命というもの、九九%! あらかじめ決まっておるんじゃ…。じゃ
がのう、その残りの一%は決められておらん。人は、それを希望、と呼ぶんじゃ。わかる
かの?」
 人が悩んでイライラしてるというのに、このババアの口調にさっきからムカムカしてい
た俺はついカッとなった。
「…知るか! あのなあ、俺は強くなりてぇんだ、誰よりもな! 俺は占いなんて信じね
ぇ! んな玉っころ見てなにがわかるっていうんだ! おい、ババア! 俺はどうしたら
強くなれる? どうすれば、だれよりも強くなれるんだ!?」
 俺は酔いも手伝って、興奮すると、ババアの机の上に乗り出して、ババアの襟元をつか
んだ。
「ひっ! な、なにするんだよ! この乱暴者!」
 バシッ!
 ババアは驚いて、つかんでる俺の手を激しくひっぱたいた。
「そんな酒くさい息で怒鳴るんじゃないよ! そんなに強くなりたきゃクラスチェンジで
もするんだね! ウェンデルの光の司祭がその方法を知ってるよ! さあ、早く出ていっ
ておくれ! おまえのような乱暴者に教える事なんてこれ以上なにもないよ!」
 自分の襟元を整えながら、ババアが怒鳴る。しわくちゃの顔しやがって、随分と元気の
いいババアだ。
「……………クラスチェンジ?…」
 それをやれば、俺は強くなれると言うのか? この自分を打破できるのか?
 ちょっと考えようとしたが、ババアがキーキーわめいてやかましいので、俺はとりあえ
ず、この店から出た。
 夜風が吹き抜けていく。酒が入っている、熱い体にちょうどいい。 クラスチェンジ…
か…。それで俺が強くなれるって言うんなら、なんだってやってやる!
 ウェンデル、聖都ウェンデル…。そこで、なにか突破口が見つかるってんなら…。よっ
し…、行くかぁ!



 家に戻ると、ウェンディも、ステラおばさんも寝ているらしく、家中どこも暗い。
 俺は二人を起こさないように、旅支度のため二階の自室へ行く。
 聖都ウェンデルまでどれくらいの旅になるかわからないし、旅なんてした事なかったけ
ど。キャンプの要領で良いんじゃねぇかな。
 俺は背負い袋に必要と思われるものを詰め込んで、支度を整えた。最後にブロンズソー
ドを鞘ごとベルトにくくりつける。
 …目的を達するまでは帰れない…。
 ……帰らない……。
 …………絶対に………。
 用意を整え、下に降りると、すでに朝日が窓から差し込んでいた。 一階には、おばさ
んと、ウェンディが寝てる部屋がある。ちょっとドアを開けて、中をのぞき込む。二人と
もまだ寝ているようだった…。
「…ウェンディ、ステラおばさん…。ゴメン…」
 小さくつぶやいて、俺はそっとドアを閉めた。目的を達するまでは、絶対にここに戻ら
ない。絶対に…。
 玄関のドアを開けると、まぶしいくらいの朝日。フウ…。ちょっと息をついて俺が歩き
だした時だった。
「お待ち!」
 聞き慣れた声に振り向くと、そこにはさっきまで寝ていたハズのおばさんがいた。
「おばさん……?」
「あんたのその腰の…、そのブロンズソードと同じだけど、こっちのを持ってお行き」
 おばさんはそう言って、ちょっと古ぼけたブロンズソードを俺に差し出す。
「これは?」
「これは、あんたの父さん、ロキが使っていたものさ。ロキは、これで剣術大会で英雄王
をやぶって優勝したんだよ…」
「え?」
 ……親父が、父さんが国王陛下をやぶって優勝したなんて、初めて聞いた…。
「さ…。持ってお行き…」
「うん…」
 俺は腰のブロンズソードを抜いて、おばさんから形見のブロンズソードと交換する。こ
れが…、父さんの…。
「旅立つ前に、陛下に会いに行きなさい。お待ちになってるよ」
「ええ?」
 驚いて顔をあげる。おばさんはちょっと笑っていた。
「あのロキの息子だから、旅立つだろうってさ…。ま、あたしもあんたの親代わりを何年
もやってるからね。わかってたけど…。血は争えないねぇ…。デュラン。ウェンディには
あたしからちゃんと言っておくから。気兼ねなしに行っといで!」
「おばさん…」
「負けるんじゃないよ!」
 ピンッと、おれの額を軽く指ではじく。おばさんは微笑んでいた。でも、少し、目が潤
んでいたように見えたのは、気のせいか…?
「……うん…! じゃ、いってきます!」
「いってらっしゃい!」
 おばさんが見送ってくれる中、俺は城に急いだ。国王陛下が、そんなに俺の事をわかっ
てくれていたなんて、意外だった…。
 城に行くと、兵士たちは国王陛下に会いに行けという。…もう、伝わってるんだ…。
 謁見の間にいくと、国王陛下はいつもの場所から、俺を見下ろしていた。
「デュラン…」
 俺はひざまずいて、国王陛下に頭を下げる。
「…はい…。…陛下、その…私は………私は……」
 何て言って良いかわからない。どう言おうか、言葉がぐるぐる頭の中で巡っている。
「…よい。みなまで言わずともよい。…行くのであろう?」
 そんな俺に、陛下は優しく声をかけて下さった。
「は、はい」
 俺は再度、深く頭を垂れる。陛下のお優しい声に、なんだか心がいっぱいになってきて
しまった。
 一介の傭兵がヒマをもらうのに声をかけてもらうなんて前例がないし、それだけ俺の事
を気にかけて下さったのが嬉しかった。
「……デュラン…お前がいつでも戻ってこられるように、兵の空きはいつでもつくってお
くからな…。…頑張るのだぞ」
「は、はい!」
 精一杯の返事をして、俺は謁見の間を後にした。ありがとうございます、国王陛下…。
 心残りはちょっとあるけど…。でも、十分すぎる国王陛下のお言葉と、おばさんのはか
らい…。スッゴク嬉しかった。
 俺は、ちょっとフォルセナの町を振り返って、そして、門を出た。
 これから大地の裂け目の大橋を渡り、マイアに続く黄金街道を行く。ちょっと前までは、
乗合馬車とか通ってたんだけど、今じゃあモンスターが多く出没するもんだから、それも
ないそうだ。
 マイアからはジャドへの定期船が出ているから、それに乗る。そして、ジャドから聖都
ウェンデルへ…。
 …もう、後戻りはできないから。最後までやり抜くしかない。なんとしてでも…。

                                                             to be continued...