今夜はパーティーなんでち。でちから、シャルロットはおしゃれして行ったんでち。
「ミック!  ミィーック!  早くするでちよ!」
「ま、待って下さいよぉ!  ボク、こういう所って初めてなんですから」
  シャルロットの子分のミックは、蝶ネクタイをゆがませたまま、こっちに走ってくるでち。
「なーにやってんでちか。ちょーネクタイがゆがんでまちよ。かっちょわりぃでちよ」
「そんなこと言ったってぇ」
  ミックは半泣きじょーたいでち。ダメでちねー、もー。シャルロットがネクタイを直してあげ
まち。
「いいでちか?  みっともないコトはしちゃだめでちよ?」
「は、はい」
  さすがに、初めてだからか、ミックは緊張してまち。シャルロットは慣れてるから、大丈夫な
んでち。
「あーあ…。でも、ヒースがいないのはさみしーでち」
「仕方ないですよ。ヒースさん、このごろ忙しいんですから」
「ぜーんぶ、あのジジイがわりぃんでち。ヒースに押し付けるなんて、ズルすぎでち」
「まーたそんなこと言ってぇ。司祭様が聞いたら、嘆かれますよ」
「いいんでちー!  しゃて、準備は良いでちか?  行きまちよ」
「はい」
  そんで、シャルロットは両方に開くドアを開けたんでち。中はすごくキレイだったでち。天井
にはシャンデリアがキンキラに輝いててね、着飾った人々でいっぱいだったんでち。
「ほえ〜」
  ミックときたら、口をだらしなくあけちゃって、目も真ん丸で。イナカモノはこれだからダメ
なんでち。でも、シャルロットの子分だから、面倒みてやんなきゃいけないでち。
「あら、シャルロットちゃん。こんにちわ」
「こんにちわ、でち」
  シャルロットは礼儀正しい良い子だから、ちゃんとあいさつするんでち。
「シャルロットちゃんは今日も可愛いわねぇ」
「えへへ、そんなことないでち」
  当然の事でちけど、ここはケンソンしなきゃいけないんでち。
「ふへ〜、シャルロットさんって、人気あるんですねぇ」
  みんながみんな、シャルロットに声をかけるものだから、ミックはシャルロットの事を見直し
たようでち。シャルロットの子分をさせてもらってるんだから、もっとありがたく思って欲しい
ところでちよ。
「えっへん。そりゃあ、シャルロットは、世界を救った勇者の一人なんでちから。しかも、これ
だけ美しいんでちから、人気あるのはとーぜんなんでち」
「…そうですかぁ…?」
「なんでちかーっ!?  その疑わしそうな顔はっ!?」
「い、いや、ボク、疑わしそうな顔なんかしてないです!  ええ、本当に!」
「本当でちかぁ?  ウソツキはドロボーのはじまりなんでちよ」
  でも、こんなこと聞いたらホークアイしゃんあたりがなんか言いそうでちね。
「本当でっす!」
  ………しかたないでちねー…。今日はここらへんで許してやる事にしまち。シャルロットは心
が広いんでちから。
  だから、ミックがシャルロットの背中あたりで、ため息をついても、聞き逃してあげるんでち。
「あーら、シャルロットじゃありませんこと?」
  こ、このイヤミったらしい、声はッ!
「フランソワ!」
  ストレートの銀髪で、年齢はシャルロットより3つも下。そのくせ、背はシャルロットより高
いんでち。顔はまあまあ。というか、シャルロットにかなうわけないんでちが。なによりもカニ
よりも憎ったらしいのはあのヒースの事がスキというコトなんでち。ヒースはアイツみたいなタ
カビシャながきんちょは相手になんかしないんでち。
「な、なんでちか?」
  フランソワの後ろにはこれ見よがしのびしょーねんが2人も。わざわざ着飾らせて、はべらせ
て楽しんでるんでち。
「いーえー。べっつにぃ。ただ、ちょっとシャルロットに挨拶してさしあげようと思いましてね」
  羽の扇なんかで口元を隠したりして、いけすかないヤツでち。あんたしゃんみたいなガキんち
ょは、深いスリットの入ったドレスは似合わないでち。
「ほーほほ。そーでちか。よきにはからえ、でち」
  バチィッ!
  シャルロットとフランソワの間にはハゲシイ火花が散りまちた。
「ふ…。ところで、シャルロット。今宵の男性のお連れは他にいまして?」
  と、フランソワのヤツ、チラッと後ろのミックを見やがったんでち。こ、この女ッ!  
「そ、それは、その…」
  これには押し黙っちゃうでち。ミックとフランソワの背後の男たちと比べると、どーしても見
劣りしてしまうでち…。別に、ミックがブ男というワケじゃあないんでちけど、まだまだガキん
ちょなんでちもん…。
「まあ…。シャルロットでは、素敵な男性をお連れする、というのはちょっと無理なようですわ
ね…」
「な、なんでちって!?」
「ほほほほ。しかたありませんわ。このわたくしの美しさでもっても、なかなか素敵な男性を見
つけるのはタイヘンなんですから。シャルロットでは、ねえ…」
  むっっかぁぁぁっっ!  金でやとってるくせにぃぃ!
「ふっ、ふ、ふふっ!  な、なーにを言ってるんでちか。ステキな男の人を連れることが、美し
さのステータスとは限らないでちよ」
  血管がぴくぴくしてるのが自分でもわかってしまいまちた。
「あぁーら。そんな負け惜しみを言わなくても良くってよ。パーティーでたいした男性のいない
女は壁の花…。そんっな空しいものは無くってよ。その空しい女が、美しい女だとでも言えるの
かしら?  ねえ、シャルロット?」
  うぐむぎゅむきききぃぃぃ……。
  そ、そんな扇から目をくれやがって、この女はッッ!
「ほほほほほほ。赤くなっちゃって。かわいいじゃない、シャルロット。ヒースが見たら、きっ
っと、キレイだと思ってくれるんじゃないかしら?  それじゃあ、ね。ごきげんよう、シャルロ
ット!  おーほほほほほほ」
  フランソワは、そう高笑いを残して、男連れてどっかに行きまちた。
「シャ、シャルロットさん…」
「帰るでち…」
「え?」
「帰るんでち!」
  シャルロットは、もうパーティーを楽しむ気にもならなくなったでち。手のひらをぎゅうっと
ぎゅうっとにぎって、パーティー会場を後にする事にしたんでち。
「あら、シャルロット!  もうお帰りですの?  お気をつけて!  今度は素晴らしい男性でも見
つけになって、お連れして下さいな!  ほーほほほ!」
  かちんっ!
  あ、あ、あの女ぁ〜…。
「あ、あのシャルロットさん。気にしたらダメですよ…」
  なんて、ミックが言うんでちけど、気にするなという方にムリがあるんでち。
  シャルロットは、もう悔しくて悔しくて。自分の部屋までダッシュしたんでち。


  ぼふっ!
  柔らかい、ふかふかベッドにダイビング!
「あ〜の〜お〜ん〜な〜!」
  許さないでちぃ!
  くやしいくやしいくやしいくやしいくやしいくやしいくやしいくやしいっ!
  シャルロットはパジャマに着替えるのも忘れて、ベッドの上でバタバタするくらい、すんごく
すごく悔しかったんでち。
「うっく、ひっく、ひうえうわ〜んっ!」
  もう、悔しくて。思い切り泣きまちた。
  フランソワがなんでちか!  あんな男たちがなんでちか!  むきゅぅ〜っ!
「あの、シャルロットさん…」
  ドアの方でミックの声がしまちた。
「…………………」
「その、えっと…」
「ドア、しめてくだしゃいでち」
「え?」
「ドア、しめるんでち!  一人にするでちっ!」
「あ、は、はいっ!」
  シャルロットは悪いコでち…。ミックは悪くないのに、八つ当たりをしてしまいまちた…。
  涙がとまんないんでち。ヒースにいて欲しいんでち。…でも、こんなかっちょわるいとこ見せ
たくもないんでち…。
「うぐ、えぐ…、すんすん…」
  ハナミズもとまんないんでち…。涙がハナに入るっていうのは本当でち…。
  シャルロットはもう泣かないって決めたのに、こんなことで泣くなんて…!
  でも、くやしい…。すごくくやしい。あのフランソワの高い鼻をへし折ってやりたいでち。


  シャルロットはしばらくボーッとしてまちた。枕を抱えて、ベッドの上から天井をぼんやり、
眺めてまちた。
  なんだか、仲間のみなしゃんにすごく会いたい気分になりまちた。
  ぼーけんは、ツラいことばかりだったけど…。でも、楽しかったんでち…。仲間が、ともだち
ができたんでち…。
  会いたいなぁ…。
  なんだか、すごくさびしいんでち…。ヒースが忙しいんでち…。
「ふえ、えぐ、ひっく…」
  また、涙がでてきちゃうんでち。
  もぉ…、シャルロットは、こんなシャルロットが嫌いになりそうでち…。どーして、泣いちゃ
うんでちか…。
  フランソワ…。
  シャルロットの脳裏に、あのフランソワのイヤミ〜な顔が浮かびまちた。
  ……そーでち。全部全部、フランソワが悪いんでち。
  あの、フランソワの高い鼻をへし折れば良いんでち…。
  でも、どーすれば……。
  シャルロットの頭に素晴らしい考えが浮かびまちた。
  負けっぱなしはダメでち。逃げてちゃダメなんでち。フランソワは、このシャルロットに勝負
をふっかけまちた。シャルロットは、だんぜん受けてたつんでち!
  それには、まず……。


「ねえねえ、ヒース!  今度のマナの祝日、空いてまちか?」
  ヒースはおじーちゃんに頼まれた書類を整理してる途中だったんでち。
「え?  今度のマナの祝日?  え〜と、ごめん、その日も仕事が入ってるんだ…」
「…そーでちか…」
「ごめんね、シャルロット。今度、休みができたら、遊んであげるから」
「…わかったでち…」
「ごめんね、シャルロット!」
  ヒースはそう、すまなさそうに笑いまちた。疲れた感じの笑顔でちた。
  実は、今度のマナの祝日に、またパーティーがあるんでちが、とにかくパーティーには、フラ
ンソワは必ず顔を出すでち。でちから、シャルロットも負けないくらいの男たちを連れていきた
いんでちが…。
  あんのじょー、ヒースは仕事でちた…。
  ふぅ…。
  他に、良い男なんているでちかねー…。
  シャルロットはため息ついて、イスに腰掛けまちた。足をぶらぶらしても、良い案が浮かばな
いでち…。
「シャルロットさーん」
  ドアがバタンと開いて、ミックが入ってきまちた。
「ミック…」
  ミックは、ダメでちねー…。この前のパーティーでフランソワに鼻で笑われちまいまちたから
ねー…。
「…どーしたんですか?  ボクの顔に何かついてるんですか?」
「……目と鼻と口がついてまち」
「は?  っと、それより、シャルロットさん。シャルロットさんのお友達が来てますよ」
「シャルロットのおともだち?」
「ええ。神殿の前で待ってます。早く行ってあげてください」
  ………。だれでちかね…?
「わかったでち」
  シャルロットは、急いで神殿の前に行きまちた。
  でも、誰もいないんでち。
「?  ミックのヤツ、ウソついたんでちかね?」
「よぉ、シャルロット!」
  聞き覚えのある声でち。……振り向くと……。
「ホークアイしゃん!」
  ホークアイしゃんは長身で、美形で(ヒースには劣ると思いまち)、けっこうかっちょ良くて、
良いヤツなんでちが、ナンパなのがいただけないんでち。
「ははっ、元気してたかぁー?」
「どーしたんでちかー?」
  さっきまでゆーうつだったのが、ふっとんでしまうくらいにうれしかったでち。
「いやなに、仕事でここに来たんだけどな。それが、一段落ついたんでな。ここにやって来たっ
てワケだ」
「そーでちか。ホーク……」
  …そうでち。
「……?  どうした?  シャルロット?」
  そーでち、そーでち。こーゆーのがあったんでち。
「ふ、ふふ、ふふふふふふ…」
「な、なんだよ、おまえ…。いきなり含み笑いなんかしやがって…」
「ほーほほほほほ!  見てらっしゃいでちよ、フランソワ!  あんたをぎゃふんを言わせてみせ
るでち!」
「シャ、シャルロット?」
「ホークアイしゃん!  あんたしゃん、いつまでヒマでちか?  いや、いつまでこのウェンデル
にいまちか?」
「いつまでって…。仕事がまだちっと残ってるから、ヒマというワケじゃないけど、来週の、サ
ラマンダーの日あたりまで、一応ここに滞在するけど?」
  なーいすたいみーんぐ!
「んじゃあ、宿はこっちで提供するでちから、ここに泊まるでち!」
「……いや、かまわないけど…。良いのか?」
「良いから言ってるんでち。そのかわし、今度のノームの日と、マナの祝日にはヒマを作ってお
いて欲しいんでち」
「……まぁ、大丈夫だろ…。そんなたいした仕事が残ってるわけでもないから」
  ホークアイしゃんはちょっと考えて、そんでもってOKしてくれまちた。
  落ち込んでた時は、全然良いコト浮かばなかったのに、こーゆー時は、次々と思い浮かぶもん
でち。
  シャルロットが次にやる事は決まってまち。大急ぎでおじいちゃんのトコへ行きまちた。
「おじいちゃーんっ!」
「?  なんだね、シャルロット」
「今日から、このホークアイしゃんが寝泊まれる部屋を一つ用意して下さいまち!  あと、フォ
ルセナへの早馬は行っちまいまちたか?」
「…いや、ここにいるぞ…」
  おう!  間に合いまちた。旅支度の見慣れた神官がそこにいるでち。
「んじゃあ、ここに来るフォルセナ使者はデュランしゃんにして下さいまち!」
「え!?  シャルロットおまえ…」
「デュランしゃんなら、ここにも迷わず来れるし、モンスター山賊海賊盗賊その他にやられる心
配はなく、カクジツにウェンデルに来まち!」
「そ…、それはそうかもしれないが…、あちらにもあちらの…」
  むぅ…。おじーちゃんたら、シブってまち…。ここはひっさつの…
「ヤダヤダーッ!  デュランしゃんじゃなきゃイヤでちぃ!」
  ひっくりかえって思い切り手足をバタバタさせるっ!  なおかつ派手に泣くのがポイントでち。
「わ、わかった、わかった!  そうしてもらうよう頼んでみよう…」
  やった!
「じゃあ、お願いでちよ!  そー言って下しゃいまちよ!」
「…しかし、あちらの事情というものがあるから、本当に彼が来るかどうかわからんぞ…」
  そりは、あのえーゆーおーの事でちから、きっと、大丈夫でち。たぶん…。
「…おまえ、なに企んでるんだ…?」
  ホークアイしゃんを部屋に案内するとき、そう言われまちたが、シャルロットは笑ってごまか
しまちた。


  ホークアイしゃんは仕事があるらしくて、あまりここに帰って来なかったんでち。つまんなか
ったでち。
  でも、三日くらいで、仕事が早くに終わった、とかでホークアイしゃんにもヒマができたんで
ち。お昼、ホークアイしゃんと、おしゃべりしながらお散歩してた時でち。
「ん…?  誰か来るな…」
  ホークアイしゃんが神殿の門の方を見ながら言ったので、見てみると、誰か馬でやってくるん
でち。
「……あぁ!  やっぱり来やがったぜ!」
  シャルロットにもわかりまちた。デュランしゃんでち、デュランしゃんが、馬にのってやって
来るんでち!  実は、本当に来るかどうか不安だったでちけど、本当に来てくれまちた!
「デュラン、デュラン!」
「デュランしゃーんっ!」
  もぉちろん、駆け寄ったでちよ。
「おぉっ!  ホークアイ!  おまえウェンデルに来てたんだ!」
  デュランしゃんは、ホークアイしゃんが来てる事に驚いてたようでち。
「久しぶりでち、久しぶりでち!」
  デュランしゃんに届かないけど、シャルロットは跳びはねまちた。
  前よりも、大きくなった感じがしまち。出会った時よりも笑った顔が似合うようになったみた
いでち。
「はははっ、おまえも元気そうだな」
「シャルロットは、いつも元気でち!」
  それから、馬はそこの神官に預け、みんなで神殿に行きまちた。
「ちょっと待ってろな。司祭さんに渡さなきゃならない書状があるんでな」
「あ、そーか。デュランしゃんは使者としてここに来たんでちよね…」
  思わず忘れてまちた。
「忘れるなよ…。おまえがわざわざデュランを使者として指名したんだろーが」
「え?  俺を指名したのっておまえだったの?」
「へへへへへ…」
  ここは笑ってごまかすのが一番でち。

  デュランしゃんはおじーちゃんとの、こむずかしい、しち面倒くさいギシキ(ちょっと違うか
も)ため、遊べなかったんでち。つまんなかったんでち。
  でも、おゆうはんは一緒に食べまちた。ホークアイしゃんとも食べまちた。スゴく楽しかった
んでち。

  ふぅ…。
  忘れちゃあ、いけないんでち。一度決めた事をやめちゃいけないんでち。シャルロットはフォ
ークをそこに置きまちた。
「デュランしゃん、ホークアイしゃん。実は、あんたしゃんたちに頼みがあるんでち」
  おゆうはんも終わって、一息ついてる2人に話しかけまちた。
「ん?」
「なんだよ」
  シャルロットは、山のように積み重なった皿を一瞥して(それにしても2人ともようけ食べま
ちね!)、机の上に両手を置きまちた。
「今度のマナの祝日に、ここでパーティーがあるんでち」
「へ?  そうなのか?」
「…そういえば、誰だかそんな事言ってたな…。なんか、国中の貴族たちを集めるとか、どうと
か…」
  シャルロットは、静かにうなずきまちた。
「それに、2人とも出席して欲しいんでち!」
  2人は、顔を見合わせまちた。
「なに?  俺らも出て良いわけ?」
  ホークアイしゃんが、ちょっと身を乗り出しまちた。
「おっけーでち。シャルロットのお友達とならば、顔パスでち」
「そ、そうか…?」
  なぜか、ホークアイしゃんは、なんか戸惑った顔しまちた。
「それででちね、2人ともシャルロットのお連れ付き人として、パーティーに出て欲しいんでち」
「…………?」
  彼らは、また顔を見合わせまちた。シャルロットの言ってる事がよくわかんないようでち。
「…なんで…、そんなふうにしなきゃなんないんだ?」
「そうそう。どーして、わざわざそんなふうにするんだ?」
「…それは、秘密でち…」
  フランソワに見せつけるため、なんて言ったら、2人とも断るに決まってるでちから。
「秘密って、おまえ…。あのな、なーんだって、俺らがおまえの連れ付き人なんつう身分で出な
きゃいかないんだよ!」
「そうそう。それじゃナンパもできない」
  それが困るんでち。
「頼むでち!  このとーりでち!  ここはなにも聞かないで、聞いてほしいでち!」
  ぱん!  と手を合わせ、シャルロットはいっしょうけんめいにお願いしまちた。
  ちょろっと目を開けると、2人はまた顔を見合わせていまちた。
「あのなぁ、シャルロット。なんにも聞かないで、じゃあ納得できないぜ」
「そうそう」
  むむっ。このままでは、2人ともうなずいてくれそうにないでち。どーしよーでち…。
「あ、ちょっとオレ、トイレ行ってくるわ」
  シャルロットが悩んでいる最中、デュランしゃんがそう言って立ち上がりまちた。
  ……うーん……。あ、こーゆー手はどーでちかね?
「ところで、ホークアイしゃん。リースしゃんに下着を返しまちたか?」
  ブバッ!
  飲んでたお茶を思わず吹き出すホークアイしゃん。ふ…。やっぱり…。
「ゲホッゲッ…。な、なんで、それを、あ、いや、し、知らねーぞっ、そんなことっ!」
  思いっ切り戸惑ってるでち。あの下着ドロはやっぱりホークアイしゃんだったでち。アンジェ
ラしゃんの言うとーりだったでち。
「知らないんだったら、なーんでそんなに慌ててるんでち?」
「そ、それは、その、お茶が熱くてっ…、その、あの…」
  ホークアイしゃんも、シャルロットにバレてるとゆーのはもーわかってるよーでち。
「…なんだか、きゅーにリースしゃんにお手紙を出したくなったでち」
「わああああああぁっっ!  はーい、シャルロットちゃーん。一緒にパーティーでましょーねー
っ!  付き人だろーがー、マネージャーだろがなんでもOKだぜ!」
  ホークアイしゃんの態度は一変。かたく、シャルロットの手を握ってくれまちた。
  これで一人落としまちた。あとはデュランしゃんでち。デュランしゃんには…。
  そんでもって、おトイレから帰ってきたデュランしゃんにもう一度お願いしてみまちたが、渋
って承諾してくれないんでち。……仕方ないでちねー。
「デュランしゃん…。こーいうコトは、あんまし言いたくないんでちけど…」
「な、なんだよ…?」
「あのときシャルロットが立て替えた飲み代と、ごはん3食分。それから、ウェンデルでぶっ壊
した中央噴水と、神殿のマナの女神さま神像の弁償代。そして、貸しておいた五〇三ルクのお金
…。しめて5722ルクだしてくれまちか?」
「……………………」
  デュランしゃんの動きが止まりまちた。
「いやぁーっ!  おっけぇ、オッケーッ!  仲間だもんな、シャルロットの頼み事は断れねーっ
て!」
  と、デュランしゃんも快諾してくれまちた。
  これで、役者がそろう事になりまちた。あとは、2人をうつくしくドレスアップするだけ!
  見てんしゃい、フランソワ!  ぜったい、ずぇったい、ぎゃふんと言わせてやるでち!

                               続く→