「あーらららら。旅の人、あの森はダメだよ、危険だから! 迷いやすいし、なにより人を子供にしち まうバケモンが出るんだから」 「え…」 あの森について聞いた途端、町の人からそんな言葉をいただいた。 「昔、この町がまだ村のころ、育てきれなくなってよくあそこの森に子供を捨ててたらしくてね。いつ のまにかあんなバケモンが出るようになっちまったんだから」 「……………………」 よく確かめもせずにあの森へ入った事は重大なミスであった。 「あ、あのー、それで、元に戻す方法は…?」 「ないよ」 「え?」 「ない」 そっけなくそう言われ、どう返して良いかわからなくなる。 「大人になるまで時間をかけるしか、ないよ」 「……………………」 引きつった顔でデュランを見るホークアイ。デュランの方も真っ青の顔で、口をあんぐりあけていた。 「まぁ…、ヤツを倒せば元に戻るかもしれないけど、なんせ相手はバケモンだからねぇ。もう、あの森 へは立ち入り禁止になっているハズだけどー…」 「……………………」 「あの森には近づかない方がいいよ。それじゃな」 呆然とたたずむ6人を残し、町に住むおじさんはその場から立ち去った。 「てめーっ! よく確かめもしねぇであんな森へ突っ込みやがって!」 いきなり、デュランが飛び上がってホークアイの胸倉をつかんだ。 「わ、悪い悪い! そんなこた知らなかったんだよーっ!」 「まあまあ、デュランも落ち着いて。これからお昼の時間ですし、なにか食べながらこれからの事でも 話し合いましょうよ」 ホークアイからデュランを引きはがしながら、リースがにこにことそう言った。 「はい。こぼさず食べるんですよー」 リースがにこにことデュランによだれかけをかけてあげている。 デュランは、子供用の椅子に腰掛けて、隣にいるリースからなにやらアップリケのついたよだれかけ をかけられていた。そして、彼の目の前にはお子様ランチがちょんとのっていた。 ホークアイがデュランの顔を伺うと、青筋入った顔でぶるぶると震えている。 「だから、子供じゃねぇって言ってんだろ!?」 「本当に説得力ねえなあ…」 ホークアイはため息混じりでつぶやいた。まるで、いきがって背伸びしている子供と言っても、じゅ うぶん通じる。 デュランは子供扱いされてどうにもこうにも面白くない。しかし、あらゆる面において、今のリース にはかなわないのである。 まるでていのいいオモチャにでもされているようだ。ホークアイはちょっと面白くなさそうにリース 達を見た。 「ほら、デュランしゃん。ランチの上に旗が乗ってるでち。よかったでちね〜」 シャルロットの方も、リースと一緒になってデュランの面倒をみようとしているようであるが。 「馬鹿にしてるだろ、俺のこと…」 「してないでちよぉ。可愛がってあげてるだけでちよー」 言って、デュランの頭をなでようとする。 「やめろ! もー!」 シャルロットの手を邪険に振り払い、半泣きの顔でお子様ランチをガツガツ食べ始めた。「しっかし …。これからどうするよ?」 「どうするもこうするも、アイツを倒さないといけないんじゃない」 変わり果てたデュランを見ながら、アンジェラはスコーンにママレードをぬる。 「そうだよなー…」 「アイツ、アンジェラの魔法、あんまり効いてなかったみたいだな」 「そういえばそーねー。ダメージをくらったからって、言うより、ビックリして逃げてったって感じす るし…」 ケヴィンに言われて、アンジェラもあのモンスターの逃げる時の事を反すうしてみる。 「じゃ、今度は闇系の魔法でせめてみれば?」 「そうね…」 うなずいて、スコーンを口に入れる。 「はい、あーんしてごらん」 「絶対やらん!」 「……………リース。聞いていたかな? 今の話…」 こちらの話に参加もせずにリースは、デュランに向かって口を開けさせようとしていた。ホークアイ が引きつった表情でそう言うと、リースはハッとした。 「え!? あ、ごめんなさい…。つい…」 ホークアイはため息をつき、アンジェラはうさんくさげにリースを見た。しかし、真面目な彼女が話 し合いに参加していないのは珍しいといえば珍しかった。 「あの、でも、倒しちゃうって事はつまりデュランが…」 「デュランを元に戻すために倒しにいくんですけどー」 話がなんだかとんちんかんになってきている。情けない声でホークアイが言う。 「あっ、そうでしたよね。…ごめんなさい…」 「残念そうな顔するんじゃねーっ!」 リースの隣でデュランが怒り出した。彼女の子供扱いにもうずっと怒りっぱなしだ。 「ったくもう、子供なんて冗談じゃねーぜ!」 とか何とか言いつつも、お子様ランチを全部たいらげている。 「とにかく、明日もまたあの森へ入ってヤツを捜しだし倒すしかあるまい。あんまり近づきたくねーし、 近づくと厄介そうだからな。飛び道具とか中心に攻めていこうか」 「そうね…」 「じゃー、オイラはどうする?」 ケヴィンはまさに接近戦を得意とし、相手に近づかないと戦闘にならない。 「…そうだな…。今回は留守番って事なるかも…。デュランを置いてくわけだし」 「え!? 俺をおいてくのか!?」 デュランがビックリして顔をあげた。 「…デュラン。悪いけど、今のおまえさんは…」 「……あ…そっか…。そうだよな…」 足手まといにしかならない。ヨロイもカブトも装備できないし、今の彼にとってあの剣は重すぎてと てもじゃないが、あつかえるシロモノではない。 デュランはショボンとなって、ジュースのストローに口をつける。 「デュラン。いつかいいことありますよ」 にこにことリースに言われて、デュランはまた引きつった顔で彼女をにらみつけた。 ホークアイがレジで清算していると、デュランはカウンターの下のオモチャにふと目がいった。 普段はあまり視界に入らないので気にする事もないのだが。 何げにその一つを手にとってみる。木の実でできたヤジロベエだ。指でたててみると、ゆらゆら揺れ る。なんとなく幼心を思い出して、デュランはフッと笑ってそれを元に戻した。 ぽん、と誰かデュランの肩を叩いた。振り返ると、シャルロットがいて、フッとほほ笑んでいる。 「デュランしゃん。シャルロットの気持ち、よーくわかったでちょ?」 「お、俺は違うぞ、ただ昔を思い出してただけなんだ!」 「無理は言わなくていいんでちよ」 「違うんだってば!」 「おい、行くぞー」 ホークアイにうながされ、デュランとシャルロットは慌てて店の外に出る。 「違うんだからな!」 デュランは走りだしながらも、まだ否定していた。 今日も昨日と同じ宿を取った。宿屋の人に少し不思議そうな顔をされたが仕方がない。 「ふー…」 デュランは何度目かもわからないため息をついた。仕方がない事とはいえ、自分の、この無力感はど うしようもない。今の彼の力ではたいした事なくてもすぐに疲れてしまい、おまけに背も力も足りない とあっては足手まといと言う意外なにものでもない。 自分の右手をわきわきと握ってみる。つい昨日まで、あんなに軽々と振り回していた剣が重たすぎて 持ち上げる事さえもできない。 しかもこの右手の小ささはどうだ。グリップを全部手でうめることもできず、きちんと握れない。 今まで、パーティで頼られる存在だった事もあって、足手まといにしかならない今の状況はデュラン にとって、ひどく悲しくて、情けなかった。 「デュラン」 リースがそっと近寄ってきた。 「…………………」 その近寄ってきた分、デュランがリースから離れる。かなり彼女を警戒しているようだ。また子供扱 いされるとわかっているだけに、彼女の側にはあまりいたくない。 「……………………」 リースがまた近付くと、デュランもそれだけ離れていく。 じりっじりっと両者の駆け引きがみんなの気づかないうちになされていた。 「なにやってんだよ? メシができたぞー」 「あ、はい…」 大ナベを手に持ち、ホークアイはリースに呼びかける。 両者の駆け引きは一応そこで終わりを告げた。 「はーっ…、リースにはまいったなぁ…」 男たちの部屋と決めた部屋で。デュランがため息混じりにつぶやいた。 「まぁ、あーも子供扱いされちゃな。あいつ、おまえを見てると面倒みてあげたくなってしょーがねー みたいだな」 「良い迷惑だよ…。っとに…」 なにしろ、今まで向けられていたデュランへの目の色が明らかに違うのだ。元のデュランなら、ああ もかまいたがるワケはないのだろうが…。 「とはいえ、ちょっと羨ましいな…」 「なにがだよ? ガキになるなんて、ちっともよくねーぞ」 デュランはまたぷんぷん怒り出した。 「何にもできねーし、すぐに疲れっちまうし、背は低いし…。本当、不便ったらありゃしねぇ」 はーっと、またため息をつく。しかし、ホークアイもリースの気持ちがまんざらわからないでもなか った。当人は17歳のつもりなんだろうが、どこをどう見たって3、4歳にしか見えない。17歳なら 可愛くもなんともない数々の仕草が急に可愛く見えてしまうのだ。ものを運ぶ時も力が足りないから一 生懸命に、ケナゲな感じさえ漂わせて運ぼうとする。背が低いからドアノブになかなか届かずぴょんぴ ょん跳びはねる、等々…。 本人にそのつもりはないだろうが、変に一生懸命なもんだから余計に可愛い。うつらうつらと船をこ ぐ姿でさえ、可愛いと思えてしまう。 年齢って不思議だ。 ホークアイはなんとなくそんな事を思いながら、眠そうに目をこするデュランを見た。 まだ宵の口なのだが、子供にとってはもう寝る時間。ましてや体力のない子供の事。疲れがでている のだろう。 「俺…、もう寝ようかな…」 「風呂は?」 「そっか…。ふわ、ああ…、はいんなきゃあ…」 一生懸命眠気をふりはらい、ベッドから降りようとする。子供にとってはけっこうな高さだ。デュラ ンは恐る恐るシーツにつかまりながらベッドを降りる。 しかし、シーツがデュランの重さで引っ張られ、デュランはシーツをつかんだまま、床に尻餅をつい た。 「あでっ」 「ぶっ!」 その姿が可愛かったのと、滑稽だったので、ホークアイが思わず吹き出した。 一瞬デュランがにらみつけてきたが、ホークアイは素知らぬ顔をしてそっぽを向いた。デュランは子 供になってから終始怒ってばかりだが、その顔も可愛いんだから、リースに通用しないわけである。 「ったく…」 トランクスが紐付きなのは小さなデュランにとってはちょっとありがたかった。腰のところで紐を調 節さえすれば、今のデュランでも何とかはけるからだ。シャツがぶかぶかなのはもうどうしようもある まい。 デュランが着替えを引きずりながらドアを開けて出て行った。それからしばらくしての事…。 「うわああぁぁっ! やっ、やめてくれーっ!」 デュランの悲鳴が宿屋中に響き渡ったのだ。 驚いたホークアイはベッドから飛び上がり、慌てて悲鳴の方へと駆けつけた。幸い、宿の人は何か出 払っているらしく、宿の人の気配はなかった。 「どうしたんだよ!? 一体!?」 ホークアイが駆けつけた場所は浴場であった。安普請なので、男女共にも分けられていないような風 呂であった。しかし、他に客はいないし、この時間帯に入るようなメンバーはいないだろうと思ってい たのだが…。 風呂場のドアが勢いよく開いてデュランがトランクスをおさえながら、半泣きの状態で飛び出して来 たのだ。 「な、どうしたんだ、デュラン!?」 「リースに…リースに……」 さすがに泣いてはいないが、今にも泣きそうな勢いである。 「んもー、逃げちゃダメじゃない」 裸足のリースがのこのこと脱衣所からやって来た。後から続々と他のみんなもやって来た。 「な、何があったんだよ…?」 ワケがわからなくて、ホークアイはリースとデュランを交互に見た。 「何があったもなにも。お風呂に入らせようとしただけですよ」 「人の服を脱がせるんじゃねーよっ!」 ホークアイの足にしがみついて、見上げて怒鳴るデュラン。 「だって、お着替え大変でしょ?」 「一人でできるってば!」 「背中だって洗うの大変でしょ?」 「だから一人でできるんだってば!」 「んもー、背伸びしちゃってぇ。でも、今のデュランはお湯につかるのは大変でしょ?」 「そ、それは……そ、そうかもしんないけど……」 「………………………」 会話を聞いていたホークアイは思わず頭を抱えてしまった。 「…わかった。リース。デュランは俺が風呂に入らせるから。おまえは安心して自分の部屋にいろ」 「えー、そんなぁー。それはずるいですよー」 心底残念そうな、しかもなにかかなり不満そうなリースの声。 「あのな。ナリはちっこくても、元はあのデュランなんだから。女の子の前で裸になれないような恥も 外聞もこいつにもちゃんとあるんだから」 「……おめーの言い方…、ナンか、引っ掛かるなぁ…」 デュランの不満をホークアイは聞き流した。 「あら。私、男の子の裸なんて平気ですよ。弟をお風呂に入らせるのは、私がしてましたからね」 「だからこいつはデュランであって、おまえさんの弟じゃないんだってば」 「…でも…。せっかくせっかく、デュランがこんなに可愛いのに…。元のあんな姿になっちゃったら、 そんな事絶対できないじゃないですかぁ!」 「あんな姿って…」 「永遠にやんなくってば良いんだってば」 デュランの文句をさえぎってホークアイが言う。 「えーっ!」 リースが珍しく不平を言い出した。 「珍しいわね。リースが不平を言うなんてさ」 アンジェラがリースの様子に驚いてそんな事を言い出した。ホークアイはアンジェラに不平が多すぎ るんだとどんなにか言ってやろうかと思ったが、後の面倒を思ってなんとか引っ込めた。 「そりゃ、私にだって譲れないものっていうのはありますよ」 「その譲れないものがあるのは全然かまわんが、デュランを風呂に入らせるとかそういうのが譲れない ものってのは、どうかと思うけど…」 「…だって、デュランたら全然面倒みさせてくれないんですもの。全部自分でやる、自分でやるって…。 全然満足にできないクセに…」 「………………」 反論できずに、デュランが悔しそうに押し黙った。 「せめてお風呂だけでもって…、お着替えしてあげようと思ったら、悲鳴あげて暴れて逃げちゃうし…」 「いや、それは逃げるだろう、普通…」 さっきからのホークアイのツッコミに少しも取り合いもせず、リースの視線はデュランに注がれたま まだ。 ホークアイは呆れ果てた深いため息をついた。 「………あきらめろ、デュラン。なにかリースに面倒みさせてやれ」 「…何でオレが……」 「とにかく。おまえだって風呂にはいらされるのはイヤだろ?」 「…………………」 ハッキリ言って全然納得もしていないデュランであったが、仕方がないので黙り込んだ。「じゃ、風 呂は俺が入らせる事にしてよ、リースおまえさん、何の面倒みたいんだ?」 「………そうですねぇー…」 とりあえず、リースはホークアイの意見を聞く事にしたらしい。やや悩み始める。 「じゃあ、添い寝」 「絶対ダメ!」 ホークアイとアンジェラの声が見事にハモったので、リースも驚いた。 「な、どうしてですかぁ…。良いじゃないですか。どうせ寝てるだけなんだし…」 「ダメったらダメなの!」 「そうよ! それなら私がやる!」 「あ、それはズルイです!」 「………モテモテでちね、デュランしゃん」 シャルロットがデュランのほっぺをちょんちょんとつついた。当のデュランは眉間にシワを寄せて黙 り込んだままだ。 結局、朝食の面倒を見る、ということで一応おさまった。 適当にデュランを風呂に入らせて、ホークアイは肩をこきこき鳴らしながら、さっさと部屋へと戻っ ていた。そもそも子供の面倒を見るのは嫌いではないが、好きでもないし、デュランはあれで17歳の つもりだから、自分でやると言って聞かないし。下手に手を出してもデュランの気に障るだけであろう。 デュランはよたよたと階段をあがっていた。こんなにも階段の段が高いとは思ってもみなかった。 やっと階段を上り終えて、息をつくとタオルを引きずって部屋へと目指して歩きだす。 「あら、デュラン。お風呂あがったんですね?」 ぎくり。 デュランがびくんと体を震わせ、恐る恐る振り返る。そこにはリースがにこにこ顔でつかつかとこっ ちにやって来るではないか。 「お、俺はもう寝るぞっ!」 そう言うなり、駆け出すデュラン。リースもデュランを追って早歩きになる。コンパスが長い分、リ ースはすぐにデュランに追いつく。 「あら、だったら絵本でも読みますか?」 「読まんでいいっ!」 「子守歌も歌えますよ」 「歌わんでいいっ!」 「まぁ、そう言わないで」 「わあぁ、だから、抱き上げるなってばぁ!」 ややうんざりげに、ホークアイは部屋のドアから顔を出す。 「リース…。こいつはナリはちっちゃいけど、一七歳だって…」 「ええ。わかってるんですけどねー」 もう人の話なんか聞かずに、リースはデュランに手をのばす。 「本当にわかってるか…?」 「ええ」 「だから、抱き上げるのはやめろっつってんじゃねーか!」 捕まってしまったデュランは、抱き上げられてじたばたともがく。 「でも、この姿のままなのは今日だけなんでしょう? 明日には戻さないといけないわけですし…」 はぁっとため息をつくリース。 「お前なー…」 「そんな顔してちゃ可愛くないですよ。ね?」 子供をあやす声で、リースがデュランに笑顔を向ける。 「誰がこんな顔させてると思ってんだ。もーいーから、降ろしてくれよぉ!」 「もー…。ちっともジッとしてないんだもの」 「当たり前だっ!」 「あー、リース! 次ぎデュランかしてー」 デュランを抱き上げてるリースを見て、今度はアンジェラが言い出してきた。 「やめろぉぉ!」 デュランは一生懸命にもがいて反抗した。 「俺は子犬や子猫じゃねーんだぞ!」 だが、今はそれと同じ扱いをうけている。 「デュランって、子供の頃はこんなに可愛いかったんですねー」 「…………………」 ぶすったれた顔をして、デュランはリースをにらみつける。 「ねー、あーんな、いかついヤツに成長しちゃうなんてねー」 「本当にねー」 ホークアイの言葉にリースがため息まじりにうなずく。 「おまえら……」 デュランのこめかみに血管がぴしぴしと浮き上がる。 「あのデュランからは想像もできないよね。こんなにぷにぷにのほっぺしちゃってさ」 「やめろよー!」 アンジェラがデュランのほっぺをつまんでくる。 「ほーんと、可愛くってぷにぷにのほっぺですねぇ」 にこにことデュランを眺めていたリース。不意に、にっこりほほ笑むといきなりデュランの頬にキス をした。 「っ!?」 「あっ!?」 「ああっ!?」 全員、突然の事に顔色を変えた。 「ばっ、な、なにやってんだリース!」 ホークアイは慌ててリースからデュランをもぎとった。 「そーよ! あんた、元はあのデュランだってわかってんの!?」 いきなり二人に怒鳴られて、リースはいささかビックリした。 「え…あの、でも、今は子供だし…」 「バカヤロー! 確かに今は子供かもしれんが!」 ぶっ! 「あっ! 鼻血ふいた!」 デュランがのぼせて鼻血を吹き出した。 「大変! 男の子って鼻血をふきやすいのよね!」 「……ちょっと、これは違うと思うんですがー…」 鼻血を流し続けるデュランを下に降ろし、ホークアイはいぶかしげにリースを見る。 「そんなことより何か拭くものを!」 「どーちたんでちかデュランしゃん! 鼻血なんかふいて!」 シャルロットもやってきて、騒ぎが大きくなってきてしまった。 続く→ |