実はモンスターと真面に戦ったのは初めてだったんでち。もう怖くて怖くて。無我夢中 で武器のからざおを振り回しまちた。 シャルロット、モンスターに襲わる! くうっ、ここで野垂れ死にはイヤでち! 「……ルロット…。シャルロット。もう終わったよ」 ふと、デュランしゃんの声で我にかえる。 「キャ…。……………ほえ?」 なんと。なんとなんと! あれだけいたモンスターがいつの間にか全滅してまち! 「しょえーっ!? いつの間にっ!? いつのまにモンスターを!?」 これは…、もしかして、シャルロットの秘密のチカラが、いま花開いてモンスターを全 滅させてしまったのでちか!? 我ながらすごいでちよ。 「もしかして…、シャルロットがやっつけたんでちか!?」 「違うよ」 ありゃま。あっさりした答え。 「……なんと…。じゃー、まさかデュランしゃんがやっつけたんでちか!?」 「まさかじゃなくても俺だよ。他に誰がいるんだよ?」 た、確かに…あっちのアンジェラしゃんは…とてもじゃないけど、強そうには見えない 人でち……。 「……じゃあ、その剣で?」 実はシャルロット、剣ってあんまり見た事なかったんでち。僧侶とかって、刃物は使っ ちゃいけないっていうのもあるんでちけど。だから、ウェンデルで剣を使う人ってシャル ロットが見たことないくらいに少ないんでち。 「素手で戦うワケねーだろーが」 「…ほよよー…。剣で……じゃあ、デュランしゃん剣士だったんでちね?」 初めて見まちた! 「なんだと思ってたんだ、おまえ…?」 う、た、確かに、剣を持ってたらフツーは剣士でちよね…。 「いや…あの…、でへへ、シャルロット、剣士しゃんって、見た事なかったんでちよ。聞 いた事あるだけだったんでちよ。ホラ、ウェンデルって僧侶とか、神官ばっかりでしょ? だから…」 そう言うと、デュランしゃんは少し、わかってくれたようでちた。 それから、シャル ロットの武器の話なんかもして、一緒に歩いていきまちた。 このデュランしゃん。見た目はコワイおにーしゃんなのでちが、話してみるとそんな事 ない人でち。けっこういい人でち。 あっちのアンジェラしゃんの方がブアイソウな感じかな…。でも、悪い人じゃないみた い…? デュランしゃんがいるおかげで、モンスターに襲われてもへっちゃらぷーでちた。その うち滝の洞窟もぬけまちた。ああー、やっぱりお日様の下が一番でちねぇ。 さぁて、ここからはシャルロットちゃんの出番でちね。二人をウェンデルまで案内して あげるのでち! ウェンデルなんて、シャルロットのお庭みたいなもんでちよ! なんか、いきなり迷子になりかけたデュランしゃんを連れて、あっちは雑貨屋しゃんと か、あっちは道具屋しゃんとか、案内してあげながら歩きまち。 「あ! シャルロットちゃん! どこへ行ってたんですか!? 司祭様が心配されています、 さ、早くお戻りになって下さい!」 途中、神官がシャルロットを見つけるなり走ってやって来て、シャルロットを連れてい こうとするのでち! 「だ、大丈夫でちよ! シャルロットは一人で戻れまち! それに、この人たちを神殿ま で案内するんでちから! ちゃんと戻りまちから! ほっといてくだしゃい!」 手を振り払って、ちょっと強めに言う。だってこの神官、この前シャルロットを神殿の 外に出さなかった神官だったんでちもん。 「…そ、そうですか…。じゃ、早く戻って下さいよ」 神官はデュランしゃんとアンジェラしゃんをジロジロ見ると、振り返りながらも急ぎ足 で神殿に戻っていきまちた。 他にも神官がうぞろぞろ出て来て、みんなみんな戻れだの帰れだの言うんでち。しつこ いなぁ、もう…。 …ん…? って事は…おじいちゃん…そーとー怒ってる…という事でちか……? うっわー、やばい…やばいでち…。書き置きはしてきたけど…黙って出てきちゃったよ うなものだち…。 ううー、おじいちゃんには、ちょっと会いたくないなぁ…。怒られるのはやっぱりイヤ でちよう…。 せっかく神殿についたけど、おじいちゃんに会うのが怖くて、デュランしゃんとアンジ ェラしゃんには先に行ってもらう事にしまちた。 …でも、なーんだってあの二人は一緒にウェンデルになんて来てるんでちかね? 恋人 どーし、とかってーには全然見えないし…。 それに、おじいちゃんの様子もちょっと気になって、こっそり二人の後をつけまちた。 「ん? シャルロット。どこに行ってたんだ? ………何やってるんだ?」 あああ、もう! こんな時に話しかけちゃダメなのに! 「シーッ! シーッ! シッシッ!」 「……またかくれんぼか?」 黙るようにジェスチャーして、あっちへ行くように身振りであぴーるすると、神官は肩 をすくめてどこかへ行ってしまいまちた。 んもう。 おじいちゃんに会うって人…今日はまたけっこういまちねぇ…。この分だと、けっこう 時間かかりまちね。 んー、ここじゃおじいちゃんとの話は聞けないし…、あっちの方がきっとよく聞けまち ね。 シャルロットはくるりと方向転換。慣れた神殿の廊下を走りぬけまちた。 よし。ここならよく聞こえまちね。 でも、その前にちょっとおなかすいたから、おやつもらってこようっと。 おやつのソーセージをかじりながら、さっきの場所に。 おおう、ちょうどデュランしゃん達の番でちね。んーと…。 …………………………………。 なにやら、マナストーンとか、フェアリーとか…。おじいちゃんでも驚くような、なん かすげー事になってるようでち。 デュランしゃんたら、なかなかおおごとに巻き込まれているようでちね! あの虫に見えたヤツ、あれがフェアリーしゃんだったでちか。聖域はシャルロットも聞 いた事あるでちよ。 ん…? なになに、マナの女神様に会えば、願いを何でもかなえてくれる!? そ、そう でちよね。マナの女神様でちもんね! …じゃあ、じゃあ、シャルロットのお願いも聞い てくれまちよね! ヒースを探してくださいって…。 女神様だもん。シャルロットのお願い、かなえてくれるよね! よ…、よし、シャルロットもデュランしゃん達と一緒に行くでち。もしかすると、旅の 途中でヒースを見つける事ができるかもしれないし…。うん、そうでちそうでち! じゃあ、もいちど、準備しなおさなきゃ! デュランしゃん達と、神殿の入り口で合流 でちっ! シャルロットは部屋に走って、おじいちゃんの机に座って、ペンで紙に、ヒースがさら われた事、デュランしゃん達と、ヒースを探す旅に出ること、心配しないでって書きまち た。ああ、またインクで汚れちまったでち。 それと、タオルと下着がちょっと足りないと思いまちたので、使いそうにない着替えと かをカバンから出して、交換にそれらを詰め込みまちた。武器のからざおも持って、さ、 行くでちよ! ………って、神殿の入り口でしばらく待ちまちた…。先に行っちゃったかな、なんて不 安に思った頃、デュランしゃん達が出て来たでち! シャルロットは腕をいっぱい広げて、通せんぼしまちた! 「シャルロット?」 「さっきの、おじーちゃんとの話を聞いてたんでち。あんたしゃんただもんじゃないでち ね。お願い、シャルロットも連れてって! ヒースを探すの手伝ってほしいんでち!」 シャルロットはいっしょうけんめいにお願いして、言いまちた。 「…………どうする?」 デュランしゃんは困ったように隣のアンジェラしゃんを見まちた。けど、アンジェラし ゃんはハクジョーにも首をふりまちた。 「あのね、シャルロット。これからスッゴク危険な旅になるんだから、あんたみたいなお 子様に耐えられるワケないじゃない!」 むっ! アンジェラしゃんだって、そんなに強くないクセにー。戦いの時だって、お役 立ち度はシャルロットとどっこいどっこいだったじゃないでちか。…でも、ここで引き下 がるわけにはいかないんでちよ! 「イヤイヤー! シャルロットも絶対行くでち! ヒースを助けだすんでち! あんたた ちがダメってゆっても、シャルロットはついていくでち! もう用意も書き置きもしちゃ ったでち!」 いくらダメってゆわれても、シャルロットはどーしても、どぉーしても、ヒースを助け ださなくっちゃあいけないんでち。 シャルロットの熱意にほだされて、とうとうアンジェラしゃんがこう言いまちた。 「…………ふぅー…。わかったわよ。そんなに言うのなら、ついて来ればいいじゃない」 うっしゃ! そうこなくっちゃあ! こうちて、めでたく子分二人をゲットちたのでち! すぐ行くのかと思ったら、疲れただろうって、宿屋に泊まる事になりまちた。そういえ ば、シャルロットはウェンデルに住んでいるから、宿屋に泊まるなんて初めてでち。 そんでもって、旅に必要なものをお買い物しまちた! お店はシャルロットが案内して あげたんでちよ。 それにしても、このデュランしゃんとアンジェラしゃん…。なーんだってすぐにケンカ なんかはじめるでちか…。滝の洞窟でも少しケンカしてまちだけど…、 はあうう。はさまれるこっちの気にもなってほしいもんでちよ、マッタク。 買い物で、ちょっと荷物が増えてしまいまちたけど、デュランしゃんが旅に必要だって 言うんだから、きっと必要なんでちょうね。よくわかんないんでちけど。 朝早く起こされて、滝の洞窟に出発しまちた。ちと眠いでちが、ヒースのためでち。 しゃて、まずは精霊ウィル・オ・ウィスプしゃん探しでち。いるっていうのは聞いては いたんでちけど、シャルロットはまだ見た事がないんでち。 「…あ? うん…へー、そうなんだ…」 いっ!? い、いきなり、なにつぶやいてんでちか、デュランしゃん!? 「上かぁ…じゃ、上らないといけないんだな? ………うん………ああ……。でも……… ……わかった。こっちだな」 …な、なにがわかったんでちか…? 「デュ…、デュランしゃん…?」 「あ? ああ。フェアリーがウィル・オ・ウィスプは上の方にいるんじゃないかって。マ ナの力が上の方から感じるんだってよ」 「…フェアリーしゃんとしゃべってたんでちか…?」 「ああ…。……あそっか…。フェアリーの声はおまえらには聞こえないんだよなぁ…」 シャルロットも、たぶんアンジェラしゃんも気持ちわるそーな顔してたんでちね。だっ て、いきなし独り言とゆーのは…ちと…。 「…ったく、不便だよなぁ…。………慰めになってねぇっつーの」 だ、誰も慰めてないんでちけど…。 フェアリーしゃんが慰めているんでちょうけど…やっぱし…こりは…うーん…。 あうあう。それででちね。からざおぶんぶか振り回してでちね。シャルロットの戦い方 もなかなかサマになったんじゃないかとは思うんでちけど…。戦いって疲れまちよー…。 おまけに上へ登るんでちよぉー…。 もうダメでちー…。 旅って疲れるものなんでちね…。うう、くじけるわけじゃないでちけど、やっぱり休息 は必要でちよぉ…。 ズシーン…。ズシーン…。 ちょっと休んでいる時でちた。なんか、地響きがするんでちよね。ほら、揺れてるでち。 シャルロットはマイコニドが落としたルクを拾って数えてまちた。お金は大切でち。 「…なんだろうな、あの音…」 「さあ?」 「そういえば、どこのだれだったか、こういう振動がするって言ってまちたねー」 誰だったでちかね。神官の誰かだったと思うんでちけど。 「でも、ウィル・オ・ウィスプなんて本当にいるのかしら?」 「本当にいるでちよ。ただ、このごろ見かけないとは聞いてまちけどね」 そうそう、そうでち。そういえば、地響きがするって噂あたりから見なくなったでちか ねぇ…。 「もしかすると、この振動に関係ある…」 ズシーンッ! ひゃわっ!? こ、今度の地響きは大きいでちね。 「近いわね…」 「あっちか?」 デュランしゃんは剣をひっつかむと、走りだして、あの狭いとこを通り抜けて行ってし まったでち。あわわ、待ってぇ。 んしょんしょ、アンジェラしゃん、早く行ってくれないでちかね。「早く行ってよぉー」 「キャッ!」 アンジェラしゃんのお尻をギュウギュウと押して早く行ってもらうと、シャルロットも ここを通り抜けまちた。 「ちょっとぉ、どこ押してんのよぉ」 「早く行かないからでちよー」 アンジェラしゃんにちょっと文句を言って、地響きする先を見上げて………。 「ほよーっ、でっけーカニでちねぇ!」 むっちゃくちゃデカいでちよ、アレは! 食卓に並ぶのなんかと比べちゃいけないくら いでちよ! 「キシャアアアッ!」 「あ、なんか怒ってるみたいでち。カルシウム不足でちかね?」 ふふふ。カルシウム足りないと怒りっぽくなるって知ってるでち。シャルロット物知り でち。 「いや、あのカラ固そうだから、それはねーと思うぞ」 「ちょっとぉ、んな悠長な事言ってるヒマなんてないわよっ!」 そ、そりもそうでちね…。 よっし、シャルロットちゃんの実力を思い知るでち! このからざおの威力を見るでち よっ! こーのカニは泡飛ばせばモノ溶かすし、足踏みしたら地響きおこるし。なかなかヤッカ イなカニでちた。最後はやっぱりデュランしゃんがトドメをさして、倒したんでち。 まずそうなカニのクセに生意気でちた。ふと見ると、カニから火の玉がふわりって出て 来たんでち。ううー、まだ倒れてなかったんでちかぁ!? って……、ありは…もしかするとー…。 「うぃっス。どーも、ボクがみなさんお探しのウィル・オ・ウィスプっスよ!」 あ、やっぱり…。 噂だと精霊にしてはナントカってみんな言ってまちたけど、この事なんでちね。ナット クがいったでち。でも、口調だけで人を判断しちゃいけないんでち。あ、でも人じゃない でちね…。 あー…、それにしても、安心したら気が抜けまちたよぉー…。なんか、フェアリーしゃ んとか出てきて、みんなしゃべってるみたいでちけど…。もぉ疲れたでちぃ…。 シャルロットはへたり込んで、休んでいると、アンジェラしゃんも近くにへたりこみま ちた。やっぱりアンジェラしゃんも疲れたんでちね。 みんなが、なんかごちゃごちゃしゃべってる時でちた。急にフェアリーしゃんが、アン ジェラしゃんに向かってこう言ったんでち。 「アンジェラ、これであなたも魔法を使えるようになるハズよ!」 「ほ、本当!?」 アンジェラしゃんはすぐさまに元気になりまちた。 ……魔法かぁ…。シャルロットはまだ使えまちぇん。勉強もたいしてしてないんでちけ ど。おじいちゃんはもうちょっと大きくなったら勉強しなしゃい、なんて言ってまちたね ぇ…。 「そのかわり、光の精霊魔法だけどね」 「ううん、それでもいい! 私、ちょっとやってみるね! 呪文は覚えてるんだ!」 呪文…かぁ…。回復魔法なら、おじいちゃんもヒースもよく使うし、他の神官もよく使 うんで、シャルロットも一応知ってはいまち。 この呪文は……ホーリィボールかな…。 「ホーリィボール!」 ゴチン! あ、やっぱりそうでち…。って、振った杖がデュランしゃんに当たったんでちけど…。 ドッカァーンッ! うひょ。初めてなのに、すごい威力じゃないでちか。そこいらの神官じゃ、壁を崩すほ どの力を持ったホーリィボールなんてできないのに…。あ、もちろんヒースの方がもっと ホーリィボールの魔法は上手でちよ。 って…、なんか、アンジェラしゃん踊ってまち…。あーあーあーあー、今度はデュラン しゃんの手を取って踊ってまち。 ……魔法を使えたのが、そんなに嬉しかったのかなぁ…。 シャルロットも…使えれば…、みんなの役に立てるかなぁ…。 to be continued... |