「キャーッ! キャーッ!」
 さっきの橋の所と似たような悲鳴をあげ、シャルロットはおそらく農機具と思われる何
かを振り回していた。
 ……良かった…。私より下手っぴぃがいた…。
 またあのキノコモンスターに襲われちゃってるんだけど。そうそうあのキノコモンスタ
ー、マイコニドって言うんですってね。デュランから聞いた。
 シャルロットの振り回すヤツはマイコニドがいる方向とは全然関係なくて、空振りばっ
かり。だって目をつぶって振り回してるんだもん。当たるわけないわよね。
 デュランの方も戦力なんて全ッ然期待してなかったのね。シャルロットを尻目にサクサ
クと敵を倒してまわってる。
「いやああん、こないでぇ!」
 だれもあんたを狙っちゃいないって。それでも、シャルロットは一人、ぶんぶん農機具
を振り回して、ヘンな踊りを踊ってるみたいだった。
 そんなシャルロットを見てると、なんていうのかな、私の方がまだ上よっていうか、マ
シっていうか、そんな気がしてさ。なんか余裕なんて出てきちゃう。最初よりは慣れてき
た事もあって、それなりに戦えた。…まぁ、デュランが斬り逃したヤツとか、だいぶ弱ら
せたヤツを殴ってただけだけど…、それでも! シャルロットよりはマシだという自負が
あった。
「シャルロット。もう終わったよ」
 あきれた声でデュランがシャルロットに呼びかける。
「キャーッ! キャ…。…………ほえ?」
 目には涙さえもためて、シャルロットはやっと踊り(本人はそんなつもりないんだろう
けど)をやめる。
「しょえーっ!? いつのまにっ!? いつのまにモンスターを!?」
 シャルロットは驚いてきょろきょろと周囲を見回した。もうモンスターは一匹も動いて
はいない。 
「もしかして…、シャルロットがやっつけたんでちか!?」
「違うよ」
 冷めた声でデュランが返す。
「……なんと…。じゃー、まさかデュランしゃんがやっつけたんでちか!?」
「まさかじゃなくても俺だよ。他に誰がいるんだよ?」
 言われて、シャルロットは私の方を見た。………まぁ、確かに私なんかよりデュランの
が強そうなのは一目瞭然よね。
「…じゃあ、その剣で?」
「素手で戦うワケねーだろーが」
「…ほよよー…。剣で……じゃあ、デュランしゃん、剣士だったんでちね?」
「なんだと思ってたんだ、おまえ…?」
 呆れ果てたようにデュランが聞く。ていうかそれは私も聞きたい。「いや…あの…、でへ
へ、シャルロット、剣士しゃんって、見た事なかったんでち。聞いた事あるだけだったん
でちよ。ほら、ウェンデルって、僧侶とか神官ばっかりでしょ? だから…」
 まあ、一理あるかも…。
 デュランは呆れたため息をついて、そして、シャルロットの手にしている農機具を目に
やった。
「ところで、シャルロット。おまえ、それなんだ? からざおか?」 あ、それからざお
って言うんだ。
「ん? これでちか。そうでちよ。これはでちねぇ、アストリアでもらったんでちよ。シ
ャルロット、一度アストリアに行ったんでちよ。そこで、何にも武器持ってないのは危険
だからって、武器代わりにと、アストリアの知り合いからもらったんでち」
「ふーん。小さいからざおだな」
「子供用に作ったからざおで、もう使わないって、もらいまちた!」
「へえー」
 なに変なトコで感心してんのかしら、この男。
 ……それにしたって、デュランって、ロリコンの気があるのかしら? 私に対してのも
のと、シャルロットに対しての対応の雰囲気っていうのかな、それがなんか違う。なんて
言うか、シャルロットに対しては優しい感じなのよね。なんだろう。

 それから、やっぱりモンスターのほとんどをデュランに倒してもらいながら、滝の洞窟
をすすむ。それにしても、シャルロットってなんてうるさいんだろう。どーでもいーこと
ぺらぺらぺらぺら。あの舌足らずでよどみなくしゃべるんだから。モンスターが出たら出
たで、さっきの踊りを踊りながら大騒ぎ。デュランに目を開けろと言われてからは、ちょ
っとは敵に当たるようになったけど…。
 デュランもデュランよね。あのシャルロットにいちいち付き合ってやってるんだから。
やっぱコイツって、ロリコンなのかしら? まぁ、会話という会話はしてないんだけど。
シャルロットのおしゃべりにデュランが適当に相槌うつだけだから、本当に聞いているの
かはわからない。
「あーっ! 出口でち、出口でち」
 シャルロットがはしゃいで駆け出した。本当だー。やあっと出口だあぁ…。なんか、と
っても長い洞窟だったような気がするなぁ…。 太陽の光が気持ち良い。あの洞窟も明る
いて言ったら、明るいんだけど、やっぱり外の明るさにはかなわない。
「ほらっ、ほらっ! あれがウェンデルでちよー」
 シャルロットが指さす先に、都市が見えた。……ウチと同じくらいの規模かしら…?
「へえぇー…。でっかいんだな、ウェンデルって」
 なに言ってんのよ。アルテナも大きいわよ。
「うふふふふ。さあさあ、行きまちょ行きまちょ!」
 スキップしながら、シャルロットはウェンデルに向かう。私たちも彼女の後について行
った。

 ウェンデルについたら別れてやると思ってたんだけど…。やっぱり、不安だからもうち
ょっと一緒にいてあげようっと。
 私はそんな事を考えながらデュランを見る。彼は、まるでお上りさんのごとくキョロキ
ョロとウェンデルを見回している。……なんか、一緒にいると恥ずかしいから距離をとっ
て歩こうっと……。
「ありゃ? あ、ちょっと、デュランしゃん! 光の神殿はこっちでちよ!」
 私は距離をとって歩くのに気をまわしていたから、デュランが神殿とは反対方向に歩き
だしたのに気づかなかった。
「え? だって大通りの北にって…」
「でちから北はこっちでちよ!?」
「………………」
 デュランはまたキョロキョロっと見回して…。頭をかきながら方向転換した。…大丈夫
なのかしら、この男……。何を考えているんだろう…。いや、もしかして、もしかしなく
ても、何にも考えてないだけ? でも、そうだとしたら今までの行動もけっこうつじつま
合うかも?
 うーん…。こんなのと一緒にいて大丈夫なのかしら…。そりゃ、剣の腕は確かみたいだ
し、あの強さは頼りになるけどー…。しかし、これから先にデュランよりも輪をかけて何
っっにも考えてない男が仲間になるんだけど…、まあ、それは先の話…。

 光の神殿に行けば行く程、神官の数が増えてきている。そのほとんどがシャルロットを
捜し回っているらしくって、出会うとことごとくがシャルロットの所に駆け寄ってきて早
く戻れと言う。
 …光の司祭の孫って言うのは本当みたい……。まだ、ちょっと、信じられないけど…。
 で、そのシャルロット、私たちと戻る戻ると言っておきながら、神殿の入り口でだだを
こねはじめた。怒られるから行きたくないって理由はないんじゃない? しかも、助けて
あげたのよ、私たち。
 …まぁ、テコでも動きそうになかったし、デュランも無理強いするつもりないらしくっ
て、しょうがないって彼女を置いて神殿の中に歩きだした。…でも、私は、シャルロット
が私たちの後をこそこそとついてくるようにやって来るのをちらりと見た。…何を考えて
んのかしら?
 光の司祭に会う人は私たちだけじゃなくて、他にもいて、この部屋でずいぶん待たされ
た。デュランとはここで別れるつもりだったんだけど、目的が一緒な以上ここでじゃあね
って言うのはヘンだし、一緒に待ってた。それに、一人で司祭様に会うのはちょっと不安
だったし……。
 それにしても、シャルロットは何をやりたいのかしら? なんか、こっちを物陰からチ
ラチラと見てるんだけど…。デュランはなんか寝てるっぽくて気づいてないみたい。った
く、この男もよくこんなところで寝れるわねー。どういう神経してんのかしら?
「次のかたどうぞ…」
 穏やかな声が聞こえた。そしたら、驚いた事にデュランはすぐに目を覚ました。寝てな
かったのかな? でも、あくびとかのびをしてるとこ見ると、寝てたっぽいんだけど…。
「あなたがたにマナの祝福がありますように…」
 ……なによ…。なんか、ただのオジイサンみたいじゃないの…。本当に私になにか良い
助言を与えてくれんのかしら? ……まぁ、いいわ。まず、魔法の使い方でも聞いてみよ
うかしら?
 なんて考えている最中に、さっさとデュランの方が話しかけちゃった。
「あのよー、俺は強くなりてぇんだ。誰よりも! クラスチェンジっつう方法を知ってる
って聞いたから、教えてくれ!」
 な、なんてことしてくれんのかしら! この私を差し置いてさ! しかも、なによそれ。
その馬鹿まるだしな願いはさ!
 光の司祭さんは、ため息ついてデュランを眺めた。
「おぬしではまだ経験不足…。もっと経験を積んでからじゃな…」
「ゲーッ! 俺は今すぐ強くなりてぇっていうのに!」
「マナストーンという名前くらい知っておるだろう。クラスチェンジは、そのマナストー
ンからエネルギーを借りて…」
「そーゆーかったりいことじゃなくってよ!」
 はいオシマイ! 次ぎ、私の番ね!
「ちょっと、私にも喋らせてよ!」
 私はイライラしてデュランを突き飛ばした。
「ちょっとオジイサン! 私、魔法を使えるようになりたいのよ! そして、お母様に認
めてもらって…」
「おい、アンジェラ! 俺が話してる最中だったじゃねぇかよ!」
「なによ、あんたのはもう終わったでしょ!?」
「これこれ、いきなり痴話ゲンカなど始めるでない」
 ち、痴話ゲンカですってぇ!?
 私が言い返そうと口を開きかけた時、デュランの頭がパァッと光って、フェアリーが飛
び出してきた。
「ちょっと静かにして! 光の司祭様、私はフェアリー。マナの聖域から参りました。世
界からマナが減少しはじめて、聖域のマナの樹が枯れはじめてるんです!」
 あ、ずるい…。
「なんと! それは大変じゃ! マナの樹が枯れてしまったら、マナストーンに封印され
し、神獣が目覚め、世界が滅んでしまう!」
 いきなりオジイサンの態度が変わった。ど、どうしたってのかしら…?
「…………なんか、大変そうだなー…」
 デュランもあまりよくわかってないみたいで、他人事のようにフェアリーを見た。
「なにを他人事みたいに言っておる! おぬしはフェアリーに選ばれし者。マナの剣を抜
かんといかんのだぞ!」
 マナの剣!?
「はあ!? おい、フェアリー。そんな話、全然聞いてねーぞ!」
「…ゴメンなさい…。マナの減少によって、私たちは誰かに取り付いていないと、生きて
られないの。あのとき、あなたに取り付いていなかったら、今頃…」
「うーん…。ま、いいや。俺関係ねーし。んじゃ、今度はそこのジーサンにでもとりつい
てくれよ」
 ま、普通そう考えるわよね。だって、フェアリーの言ってる事って、なんかすっごく大
変そーなんだもん。
「それができれば苦労せんわい。フェアリーは一度取り付くと、宿主が死ぬまで他の人に
とりつく事ができんのだ…」
「なんだってぇ!?」
「じゃ、あんたが死ねば良いんじゃない」
「縁起でもない事言うなっ!」
 私の率直な意見に、デュランが怒り出した。
「ちょっと待ってくれよ、俺はだなぁ…」
「紅蓮の魔道士に打ち勝つ事が目的なんでしょ? マナの剣を手に入れれば、あなたは最
強の戦士にだってなれるんだから」
「へ?」
 最強という言葉に弱いのか、デュランの態度が一変する。
「そ、そーなのか?」
 自信たっぷりに頷くフェアリー。それから、彼なりに考えたらしく、デュランはちょっ
と頷いた。…どーせたいした考えじゃないんだろーけど。
「そっか…、それならそうと、早く言ってくれよ」
 ……なんか、デュランって、フェアリーにノせられてる所があるような…。ま、いいか。
私にはどうせ関係ないし…。
 …って、思ってたんだけど…。司祭のオジイサンがマナの剣について話し出した。…お
母様もマナの剣をどうするって言ってたわよね……。
 オジイサンの話は、…あの、古代呪法の事までふれていた…。……その呪法を…お母様
は私でやろうとしていた……。……なんでなんだろう……。
 で、デュランがマナの剣を手に入れるため、その剣がある聖域に入る方法っていうのが
もう一つしかないらしくてね。
 その方法っていうのが、マナストーンの近くにいるっていう精霊を仲間にしていくんだ
って。デュランはウェンデルの近くに住むという光の精霊の力を借りにまたあの滝の洞窟
に行くんだって。
 ……どうしようかな、私…。ここで別れても良いけど、でも、それからどうしよう…。
…マナの剣…か…。それさえ手に入れれば何でもできるのかな…。…お母様もそんな事言
ってたような気がする…。そういえば、聖域にはマナの女神様がいるのよね。会えば、私
の願いをかなえてくれるかしら。
「…ねえ、フェアリー。私も一緒に行けば、私の願い、かなうかなぁ?」
 魔法が、使えるようになりますようにって…。
「もっちろんよ。女神様は全知全能よ。なんの願い事でもかなえてくださるわ。それにア
ンジェラ、あなたなら精霊に会えばすぐに魔法を使えるようになるハズよ」
 このフェアリーの最後の一言がこれからの私の行動を決定させた。これは行かなくてど
うするというもの。
「そ、そうなの? な、なら私も行く! 一緒に行くわ! 改めてよろしくね、デュラン!」
 ちょっとムカつくトコあるけど、我慢すればいいし、強いしけっこう頼りになるし、バ
カならそれなりに扱いやすいわよね! うんうん! 顔だってまぁ見苦しくないしね! 
これくらいなら一緒にいても我慢できそう!
 私は嬉しくなってデュランの手をにぎりしめた。
 …そういえば、デュランの手を、いや彼自身に触ったのってこれが初めてだった。ごつ
ごつしてて、大きな手だった。
「お、おう…」
 ためらいがちにデュランが頷いた。
 さあ、これからやる事ができた。精霊にさえ会えば、私も魔法を使えるようになる。こ
れは私にとって、もうすっっごく魅力的な事だった。
 魔法が使えなかった私…。それが使えるようになるって言うんだもの! デュランくら
いはガマンガマン!
 これから、これからだよ。私の人生これからよ。あの時、自分を見失わないで良かった。
あの時、もし自分を見失っていたら、私はきっとここにいなかった。あそこで終わってた。
終わらせないでいて良かった。本当に良かった。
 私は司祭となんかやってるデュランとフェアリーを振り返って見た。
 彼らがやって来るのを確かめて、私は歩きだした。
 ふぅ、これから、これからだもんね。

 外に向かって歩いていると、デュランが話しかけてきた。
「…いいのか?」
「なにがよ?」
「これからの事だよ。俺もあんまり実感わかないが、かなり危険な旅になりそうだぞ?」
 …うん…。それは、なんとなく私も感じてた。これから、大変そうだっていうのは。で
も、私の心はもう決まっていた。というか、これ以外に私の道はないんだと思う。
「…承知の上よ。どうせ、帰る所もないもの…。それなら、やるだけやって…ね。うまく
いけば堂々胸をはって帰れるし。なにもしないなんてイヤなの」
「…そっか…」
 そう言うと、デュランはそれ以上何も言ってこなかった。私の事、ちょっとは見直した
りしたんだろうか。でも、見直すっていっても、私の事どう思ってんのかしらね?
 神殿を出ようとしたんだけど、またこの男は迷ったのね。トイレ行ってくるって、んで
その帰りまた迷ってるの。んもー。いくら強くってもダメね。
 で、神殿の出口で、あのシャルロットがバッと飛び出て(待ち伏せしてたみたい)いき
なり通せんぼした。
「シャルロット?」
「さっきのおじーちゃんとの話を聞いてたんでち。あんたしゃん、ただもんじゃないでち
ね。お願い、シャルロットも連れてって! ヒースを探すの手伝ってほしいんでち!」
 デュランは困ったようにシャルロットを見て、そして私を見た。
「……………どうする?」
 どうするって、連れていけるわけないじゃないの、こんなガキんちょ。さっきの洞窟で
だって足手まといだったじゃないのよ。
「あのね、シャルロット。これからスッゴク危険な旅になるんだから、あんたみたいなお
子様に耐えられるワケないじゃない」
「イヤイヤー! シャルロットも絶対行くでち! ヒースを助けだすんでち! あんたた
ちがダメってゆっても、シャルロットはついていくでち! もう用意も書き置きもしちゃ
ったでち!」
「あのねー…」
 何とか私もデュランも説得しようとしたけど、ダメね。テコでも動きそうにない。その
うち面倒くさくなっちゃってきてさ、どーせすぐにネをあげるだろうから、そのうち帰る
と思ったんだ。きっと、この子はこれからが、どんなに危険な旅なのかってのがわかって
ないだけなのよ。
 だから、いいよって私が言ったの。
 デュランはまだ戸惑ってたみたいだけど、こんなとこで足止めさせられるのも馬鹿らし
いじゃない。
 もっとも、私はこの時、旅の危険度をわかっているようでわかってなかったし、それは
シャルロットも同じだろうと思う。でも、結局、彼女が同行して良かったって今なら思う
けど。

 ウェンデルで一休みする。本当はすぐにでも行って良かったんだけど、疲れてるだろう
って、デュランが言ってくれてね。意外に気が利くじゃない? それに彼、旅の買い物を
したかったみたい。私とシャルロットの持ち物を聞いて、なんか不安になってたみたいだ
し…。
 それで、とりあえず、宿屋をとって、デュランが何を持ってるかとか聞いてきたから、
とりあえず、関係ありそうなものを並べてみたの。シャルロットもね。
「………おまえら…。ホントーに、これで旅する気があるのか…?」 沈痛そうな面持ち
でデュランはそう言った。
 私とシャルロットは顔を見合わせるだけだった。だって、全然わかんないんだもん…。
「ともかく、旅に必要なものを買おう。俺もそんなに金を持って来てるワケじゃないんだ
がー…」
 って、サイフの中身をぶちまけた。シャルロットもそれにならってぶちまける。私も同
じようにした。
 デュランは私より少なく、シャルロットはさらにもっと少なくて、私が一番多かった。
「…おまえ…かなり持ってるな…。こんな大金持ち歩いてたのか?」「…ま、まぁね」
 本当はどれくらい大金なのかよくわからないんだけど、とりあえず胸をはってみた。
「あ、ちょっと。もしかして私のお金使うの? やーよ、私。なんで私のお金が使われな
きゃいけないの?」
「はぁ? なに言ってんだおまえ?」
 デュランが顔をしかめて私に言う。
「だって、私のお金なのよ!」
「そ、そりゃそーだけどよ。でもよ、これから三人で行く以上協力しあわねーとしょーが
ねーだろ?」
「私のお金を使うのが協力なの!?」
「三人で共有して使うんだったら、おめーも出すのがスジじゃねぇかよ。誰もてめーの金
だけ使うなんて言ってねーだろ!?」
「なによ、怒鳴らなくたっていいじゃない!」
「誰がそうさせてんだよ!?」
「あ、あの…えと、ケ、ケンカはダメでちよ!」
 シャルロットが私らをオロオロと見上げる。
 結局、私はデュランの持ち金全額分と同じ額を出させられる事になった。デュランはそ
のお金を全部彼の財布につめると(なんかこれがムカつく)買い物に行く事になった。
「ねぇね、何買うでちか? 良い駄菓子屋さんなら知ってまちよ?」「アホ。旅に駄菓子が
いるか! それより、雑貨屋とか、道具屋、武器防具の店とか知らねぇか?」
「雑貨屋しゃんでちか、それなら…」
 とゆーわけでシャルロットにそれぞれの店を案内してもらった。結局、デュランが選ん
で買ってたな。高いとこは高いって、すごんでまけさせてたりしてた。なんか野蛮。
 私はマントみたいなの買わせられたな。なんか、野宿の時に使うとかなんとか。本当は
野宿なんてヤなんだけど、旅なんだもん、それは…しょうがないんだよね…。でも、イヤ
だなぁ…。
 そんで、宿屋に戻って一泊してから出立した。

                                                             to be continued...