今回、台湾は多めに休みをとって、連日ここへ泊まり込みに来ているのに。
 昼間、彼が仕事の時は買い物に行ったり遊びに行ったり、夜は夜で食事に行ったり、彼が休みなら映画や観光など。時には日本の在宅の仕事を手伝ったりしているけれど。
 一人暮らしの男の所に女の子が一人、連日泊まり込みである。
 台湾ももちろんソッチの目的も含めて彼の所へ遊びに来ていたのだ。最初の2、3日何もないのはまあそれもあるだろうと思っていたけれど。
 泊まれる日数の残りが少なくなってくるにつれ、のんびり構えてなどいられなくなってきた。
 いや、途中からのんびり構えてなどおらず、彼女にしては果敢にアタックしたのである。
 必要以上に寄り添うのは頻繁に行っていたし、恋愛映画のDVDを故意に選んで鑑賞したり、お風呂に一緒に入ろうとも言った。隣に布団を並べて眠りたいとも言った。
 しかし。
「いえ、むさくるしい爺さんの隣に寝る必要はありませんよ。お気遣いは無用です」
 そのことごとくがスルーされるか断られたのだ。
 もう宿泊日数は今日で終わる。今夜が最後で、明日には台湾も自宅へと帰らねばならないのに。
 夕飯の後片付けの後、台湾は日本に向かって彼の隣で眠らせてくれと頼んだけれど、返ってきたのは先程の言葉だった。
「あっ…、あの! 気を使ってるんじゃなくて! そうじゃなくテ!」
「お風呂を入れて来ますから」
 その無表情な面にうっすらと笑顔を浮かべると、立ち上がって部屋を出て行ってしまう。
 先日の大人の玩具の件で、日本を怒らせてしまったかもしれないとどこか後ろめたい気持ちがあるのも確かだから、台湾もそう強く言い出せなかった。
 DVD鑑賞やTVゲームも付き合ってくれるし、ご飯も美味しいものを出してくれる。特にうるさい事を言ってくるわけでもない。それこそ、父親とか祖父のような、そんな立ち位置で接しているようで、疎んじられている空気は感じないけれど。
 どこかで頑然と台湾を拒んでいる気配は感じられた。
 もしかしなくても、あの一件で彼を怒らせてしまったかもしれない。しかし、あの事で謝ろうとしても、怒っていないと言われてしまうし、あまりあの事をほじくり返すのもはばかられた。しかし怒っていないのなら、何故あんなに楽しそうにしていたお餅を作るクッキングトイが届いても、封を開けようとはしないのか。
 台湾は深いため息をつく。
 根は助平で変態の彼の事だから、もし、これを彼に見つけられてしまったら、毎夜睡眠時間が削られるんじゃないかと、おかしな困り方をしながら、インターネットの通販ボタンを押したものなのに。
 もっとも、それは結局夢想に終わるだろうと、どこかで醒めた考えがあった。彼は自分の領域に入ってきて欲しくないからこそ、周囲にもそれを用いる。だから、プライバシーを尊重してくれる。
 台湾としては、もっと深い関係になるためにも、彼のその領域を打ち壊したいと思っているが、ともかくそういう事で彼女の買った物に詮索などしないとわかっていた。
 だから、そういう事にはならないだろうと予想していた。しかし、また違う理由でこういう事になってしまうとは思ってもみなかった。
 台湾なりに頑張って迫ってはいるが、彼女の手前、彼は口に出したりはしないが、彼の女性の趣味は大和撫子で、積極的に迫ってくる女性はそれほど好みではないのは知っている。
 あまり開けっぴろげに迫れば逆に彼は引くだろう。
 だから、わざと胸元の開いたシャツとか、足がよく見えるミニスカートとか履いているのに。
 なんかこっち見ないようにしてるし……。
 もう一度、台湾はため息をつく。
 なんだか泣けてきた。
 怒らせるつもりはなかったのに。
 他意はなかったつもりだけど。
 むしろ直接怒ってくれればちゃんと謝るのに。
 どうすれば良いのかわからない。
 好きなのに。
 こんなに好きなのに。
 想いだけが空回りしているのが、痛感させられる。
 滲んできた涙を拭った時、日本が居間に戻ってきた。
「お風呂が沸いたら、先に入ってくださいね」
 客人という事で、台湾を先に入らせてくれる配慮だろうが、そのある意味他人行儀な態度が悲しくなってくる。自分達はもっと親しい仲ではないのだろうかと思いたいのに。
 決して脈がないわけじゃないはずなのに。どこかでこんがらがった糸があり、それをほどかなくてはきっとお互いヘンなしこりを残したままになる。
 とにかく、どこかに解決の糸口を見つけたい。
 台湾はいつものように明るい調子で、精一杯の笑顔を彼に向けた。
「あの! 日本さん! 私、あなたと一緒にお風呂に入りたいデス!」
「駄目ですよ。年頃の娘がこんな爺さんと一緒にお風呂だなんて」
 しかし、それもあっさり断られた。
 日本の言っている事は、一般常識で考えれば道理なのである。特別な関係の男女でなければ一緒にお風呂など普通は言語道断であろう。
「あまり、冗談を言って困らせないでください」
 その少し困った笑顔が、台湾の心をえぐった。それなら、彼と自分はどういった関係だというのだ。
 恋人同士だというなら、歳の差が激しいだろう、などと彼は言い出すのか。
 いや実際、過去に言われたような気がする。
 けれど。
 じゃあ、この気持ちは。
「っ……!」
「えっ!?」
 突然、大粒の涙をぼろぼろこぼし始めた台湾に、日本が動揺する。
「ど、どうしたんですか!?」
 どうしたも、こうしたもないのに。
「台湾さん!?」
 日本は慌てて彼女に駆け寄ってしゃがみこむと、心配そうな顔でのぞき込んできた。
「あの……」
 その彼の顔を眺めながら、台湾はぼろぼろと涙をこぼし続ける。涙で歪む視界の中の彼が、それでも愛しかった。
 ひたすら困った顔で、台湾の顔をのぞきこみ彼女に手を伸ばそうとして、躊躇する。
 彼女に触れる事に、自分で禁じているかのように伸ばした手の動きが淀んだ。彼はわずかに視線をそらして黙考して、そして意を決したように台湾の背中を撫でた。
「どこか……痛い所でも……?」
 腹痛でもおこして泣いたとでも思っているのだろうか。優しく台湾の背中を撫でて、顔をのぞき込んでくる。
「……なにか……悲しい事でも……?」
 自分に原因があるとまるでわかっていないセリフで、台湾の背中を優しく撫でる。
 まぶたを閉じても、涙は次から次へとこぼれ落ちた。
「うっ……。……っく……うわあああああん、ふええええええん」
 悲しくて情けなくて、台湾は幼い子供のように声をあげて泣き出した。自分で引き起こした事がわかっているから、行き場のない感情が爆発する。
「あ、あああー、あああーもうー……」
 声をあげて泣く台湾に合わせるかのように、日本が困った声をあげた。泣きじゃくる子供相手を前にして、こぼすような声だ。
「あああもうー…。はいはいはい、よしよしよし」
 そう言って、彼は台湾を自分の胸の中に抱きこんで、背中をゆるく叩いてやる。
 子供扱いするなと言いたくなったけど、彼の腕の中は気持ち良くて、抱きしめてくれた事は嬉しくて、彼の胸にすがって今までの鬱憤を晴らすかのように泣きじゃくった。
「ううっ、うええぇぇええ〜ん、ふえええええぇぇん、うわあああああん」
「よしよし、よしよし」
 あやすように、なだめるように。台湾の頭と背中を優しく撫でて、包むように抱きしめてやる。
 それは、昔の記憶だった。
 彼女が今の名前とは違う名前で日本から呼ばれていて、一緒にいた時代。
 厳しかったし、理不尽な事もあったけど。本当に困った時は助けてくれた。自分ではどうしようもなくてひたすら泣きじゃくる自分を、こうやって慰めてくれた。
 あの時の台湾は、幼い少女の姿をしていたけれど。
「よしよし…」
 昔は大きく感じた手のひらだけど、優しく撫でる手つきは変わらないように思えた。
 ああ、気持ちが良い。
 胸にすがって、背中に手を回してしがみついて、腕の中に包まれて。
 ひとしきり泣いて気持ちが落ち着いてくると、あとはただこの体勢が気持ち良かった。
「……落ち着きましたか……?」
 頭の上から降ってくる穏やかな声に、胸に頬をくっつけながら、台湾はこくんと頷く。
「………もう少し、こうしていますか…?」
 随分落ち着いてきた台湾だが、ここですぐに彼女を解放するのは落ち着かなかろうと、日本はそう声をかけた。その優しい声に、頬を少し赤らめながら、台湾はもう一度頷く。
 どれくらいそうしていたか、居間に風呂がわいた事を知らせる音声が、鳴り響いた。
「……台湾さん……。お風呂がわきましたよ…。入ってきてはどうですか? ここでこうしているより、ずっと落ち着くと思いますよ…?」
 そう声をかけてくる日本の声は優しくて、他意はないのが感じられる。けれど、今の台湾にとってはこっちの方がずっと落ち着くのだ。
「…ヤです……」
「………………」
 拗ねたような台湾の声に、日本がため息を吐き出す。
「……ねえ、日本さん……」
「はい、なんですか…?」
 寄せた胸に頬ずりしながら、台湾が甘えた声をあげると、日本も優しい声で返事をする。
「抱いてください……」
「…………え?」
 それは、まったく予期していない言葉だったようで、彼は間抜けた声をあげた。
「だから……。セックスしてください…」
「……………はい?」
 今度は聞き間違いと思ったのだろうか。びっくりした顔のまま、小首をかしげる。
「………………」
 お互いに見やったまま、沈黙の時間だけが過ぎていった。
「……いや……、年寄りをからかっちゃいけません」
 しかし、台湾は冗談を言ったのだと内心で片付けたのか、日本は困った顔でそう言うと、彼女は口をとがらせる。
「からかってないです。本当です」
「はいはい。有り難うございます」
 本当にそう思っているのに、これでは、幼児が大人に向かって結婚するとでも言っているような状態ではないか。ただ好きというだけで、ありえない事を口走る幼児のような。そんな事はないはずなのに、そうとしか受け取ってもらえないのか。落ち着いたはずの気持ちはまた急に苛立ち始める。
「だから、冗談じゃないです。本気です! 子供扱いしないでください!」
 さっきまで子供のような態度をとっていたのも忘れて、台湾はそう日本に詰め寄った。
「いやだって、そんな……私と貴方では……」
「釣り合わないですか! 私では駄目ですか! 私は……女としてダメなんですか!」
 女として魅力がないと暗に言われたようで、瞬間的に沸騰した台湾はまなじりを釣り上げてヒステリックに叫んだ。
「そんな事は……」
「最初に、最初に私を抱いたのはあなたじゃないですか!」
 あの時代。嫌がる彼女を、大人になる前の彼女に手を出したのは日本の方。それを忘れたかのような日本の態度にはムカついたのは確かだ。
 ただ、今ではそれを気にして、自らは手を出してこないのは知っている。
 手を出さないから良いじゃなくて。そうじゃなくて。無理強いじゃなくて。気持ちが通じ合えば、お互いに求め合えば、とても気持ち良いものだから。
 だから。
 あんなに求め合った夜もあったじゃないかと。
 あれは無かった事にするのかと。
 それを否定された気分になった台湾はまた爆発した。さっきのとは違う方向で、激しい怒りと悲しみで。
「もう嫌になったんですか! 飽きたんですか! 前は子供が良くて、今は子供が嫌なんですか! だから、だから抱く気もおきないんですカ!」
 落ち着いたはずの涙がまだ噴き出してき、台湾は泣き叫ぶ。どうして手を出してこないのか。先日の件は実は大した事ではなくて、もっと根本的な何かが、台湾には致命的に足りない何かがあるから抱いてくれないのかと。
 この気持ちはひたすら一方的だったのだと。
 こちらは男として見ているのに、あちらは子供として見ていなかっただけなんだと。
「ちょ、そんな事……」
 日本が何か言おうとしているが、それを聞けるような精神状態ではない。
「ワタっ、ワタシはあなたが好きです! 大好きです! 何度でも言います! 大好きです! でも、あなたは子供だからと相手にしてくれないて、私はどうすれば良いんですか!」
「台湾さん、と、とにかく、とにかく落ち着いてください」
 爆発して泣き叫ぶ台湾に、日本は彼女の両肩に手をおいて、どうにかなだめようとするが、そんな事では止まらなかった。
「私がどんな思いで、ここに来てるかわかります!? あなたと一緒に過ごしたくて、頑張ってこんなにたくさんお休みとったのに! お洒落な服着ても、見向きもされないじゃ、私は女として全然ダメじゃないですか!」
「とにかく落ち着いてください、台湾さん!」
「あなたにとって私との付き合いは子守だったんですか! 近所の子供の相手だったんですか!」
「なにを言って……」
「もう明日には私ここから帰らないといけないのに! すごく頑張ってお洒落したのに! もの凄く楽しみにしてたのに! あなたとたくさんたくさん過ごしたかったのにぃっ!」
「台湾っ!」
「っ…!」
 埒があかないと判断した日本は、鋭い声で呼びつけると、我に帰った彼女は一瞬息を飲む。
「……とにかく落ち着きなさい。これじゃ話もできません」
 最近ではとみに聞けなくなった、彼の命令口調。幼少時の刷り込みとでも言うべきか、こうなると台湾は彼に逆らえなくなる。
 やっと大人しくなった台湾を見て、それから日本は肩の力を抜くと一緒に息を吐き出した。
「……どこから話せば良いものやら…ですが……」
 困惑したようにそう言って、日本は腕をのばすと袖で台湾の涙を優しくぬぐってやる。
「……正直……からかわれているのは私の方だと思っていたんですけどね……」
 そう言いながら、彼は顔全体にほろ苦い笑顔を浮かべた。
「……?」
「…あなたは若い女性ですが、こちらは腰痛も持っている年寄りです。そういった場合、普通に考えれば女性の方から好意を寄せられる事など普通ありません。せいぜいお金目当てが関の山といったところでしょう」
 そんな事などないと言いたかったが、口を挟める雰囲気ではなくて、台湾は言いかけた言葉を飲み込む。とはいえ、彼の言う事が一般的に言えば間違いではないところが、もどかしい。
「ただ、逆の場合の、年寄りが一方的に若い女性を求めるのはある話です。……過去、私はそれをしたわけで、自省しなければと戒めていました。それに、その、先日あなたがああいうのを購入したのを偶然にも目の前で見せられて、馬鹿にされたように感じたのも確かです」
「……それは、ゴメンナサイです! あれは私、悪かったと……!」
 先日の件が出てきたので、台湾は急いで謝った。やっぱり彼は怒っていたのだ。しかし、謝る台湾を日本は軽く手で制する。
「いいんですよ。私も大人げなかったのですから。今までのあなたのアピールとでも言うんでしょうか。露出が高くて目のやり場に困る衣服も、隣で寝ようと仰る事も、あなたが私をからかっているのだと思っていました。もしくは、若い子特有の、特に他意なくやっている事なのかと。ここで、私が調子に乗っては阿呆が見る何とやらになると。思っていましたから」
 つまり、彼は例の一件で馬鹿にされていると思い、その上でアピールしてくる台湾にからかわれていると、思っていたと。
「………………」
 そういった気持ちはまったく無かった台湾だが、せっせと火に油を注ぐような事をしていたのだと思うと、少し薄ら寒いものが背中に走る。
「あなたの気持ちも知らずに、私も意地を張りました。すみません。随分あなたを追い詰めてしまったようですね……」
 優しくそう言って、彼女の涙で濡れた頬を優しく撫でた。しかし、撫でた先からまた次々と涙がこぼれ落ちてくる。
「泣かないでください……すごく……困ります……」
 苦笑いを浮かべながら、日本はあふれ出る涙を何度も拭いてやる。そのうち、台湾は日本の顔を両手で掴まえるとおもむろに顔を寄せた。
 唇を何度も何度も重ね合わせて、それから吸い付いて、ゆるんだ顎を開かせて口内へ強引に舌をねじ込む。ちょっと及び腰気味の彼の頭を掴まえて口内の舌を追いかけていると、やがて観念したようで、逃げずに舌を絡ませてくれるようになった。
 ひたすら愛しい想いをぶつけるままに彼の口内を貪り、息苦しくなって唇を離しても、またすぐに食らいつく有様で、日本はまごつく様子を見せながらも、彼女の想いを何とか受け止める。
 やがて口づけだけでは飽きたらず、もっと身を寄せるべく彼の膝の上に座った。
「あ、あの……」
「…重たいですか…?」
 日本が何か言いたそうなので、台湾は唇を離し、鼻がくっつきそうな程の至近距離で、彼を見下ろす。
「いえ…それはありませんが……。本当に良いんですか…?」
「何がですか?」
 今度は鼻先にキスをして、頬、額にとまた唇を落とした。彼女の様子は、なにかに暴走気味で、瞳に宿る光がなんだか怪しい。
「……その…、私が相手で……」
「イイんです!」
 きっぱり言い切って、また唇を奪い、力一杯抱きしめた。細身ながらも筋肉がみっしりついた体つきが服を通しても感じられて、それが嬉しくてなんだか昂揚してくる。
 背中の両腕だけでなく、脚も腰に絡みつけて下腹部を押しつけると、そこでお互いの股間が密着している事に気付いた。
 既にそれに気付いたらしい日本がむず痒そうに身体をよじらせたが、台湾は彼を逃がすまいとばかりに、腕も足も使ってさらに身体を密着させる。
「…ん……ちょ……んはっ……、ま……」
 何か言おうとする言葉を唇や舌で封じ込んで、背中をかき抱き、腰を擦り合わせた。愛しくて愛しくて、その感情をただひたすら直球で彼にぶつけ続けた。
「……ふ……んんっ……ん……」
 むず痒そうに眉をしかめ、台湾の愛情を受け続けた日本に変化が訪れる。
 台湾の猛攻に戸惑い気味に泳いでいた手は、彼女の腰に乗りやがて丸いお尻をあやしい手つきで撫で始める。
「…………ん……」
 それに気付いて、台湾はようやっと唇を離し、少し下にある日本の瞳で見つめた。その瞳は、先程の穏やかな彼のものとはどこか違っている。色々腹にとどめて考え込む男の眼ではなく、もっと直情的で野性的なものだ。
「……明日は、お互い腰が立たなくなるかもしれませんね…」
「え…?」
 さらりと恐ろしい事を言いながら、今度は日本の方が台湾の唇を奪う。優しく抱いてくれた先程のものとは違い、えらく情熱的で、そして助平だった。
「んっ……ふぅっ……んんっ……」
 片方の手で胸をまさぐり、もう片方の手で尻を撫でくりまわす。重なり合う彼の股間が熱く硬くなり始めている。
 唇が離れると、自分の膝の上に乗る台湾のシャツのすそをつかみ、ブラが見えるくらいまでめくり上げた。
「…あっ……」
 そのブラもまた上へずらし、カタチの良い乳房がぷるんと揺れ出ると、早速それにかぶりつく。
 乳房を吸いながらも、手は休まず彼女の肉体をまさぐり、かき抱く。その手つきの好き者さ加減に、彼女も、はたして彼のこの性癖を呼び覚まして良かったのか、一瞬迷う。
 しかし、中途半端な覚悟でここに来ているわけでもないのも事実だ。なにより、今までの寂しさを帳消しにしてくれそうな勢いを反故にする事もないだろう。
 畳の上に押し倒されながらも彼女の腕は、しっかりと彼の後ろ首を抱きしめていた。

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