そのへんの男

  それからしばらくしてのこと。小さな飯屋でアシュトンは昼飯を食べていた。
  おなかもいっぱいになって、一息ついていると、背中の方の会話が耳に入って来た。
「へぇ〜、世の中物騒になったもんだね」
「まったくだ。まぁ、もともとあの、クロス同穴は物騒ではあったけどな。あんな化け物が巣くう
とはよ」
「でも、その話を聞いてクロス洞穴に向かった戦士って多いんだろ?」
「ああ。だから、ヤツがいなくなるのも時間の問題だろうな」
  会話の内容から、察するに、クロス洞穴になにか化け物が住み着いており、それを倒そうと戦士
たちがクロス洞穴に向かっているらしかった。
「で?  その化け物って、どんな化け物なんだよ」
「なんでも、額にキャッツアイをつけたジャイアント系らしいぜ。なんでも、そのキャッツアイ、
やたらばかでけぇそうじゃねーか」
「へー、そりゃまた、金目当ての戦士たちが群がりそうだな」
「ふぅん…」
  アシュトンはちょっと考えて、そして立ち上がった。自分も化け物退治をしてみようと思い立っ
たのだ。そんなに大きな宝石なら見てみても良いし、ちょうどよい腕磨きにもなるだろう。
「お客さん!  お勘定!」
「あ!  す、すみません!」
  勘定の事をすっかり忘れていたアシュトンは、慌てて店員のところへ向かった。

「ここが……、クロス洞穴……」
  アシュトンはきょろきょろしながら、洞穴内部を見渡した。ジメっぽく、いかにも洞穴と言った
ところだ。中は薄暗くはあるが、どこからか光が漏れているらしく、そこそこ明るかった。
  アシュトンは深呼吸を一つ。そして、両手に剣を握り締めると、内部の奥へと進んで行った。

「えぇいっ!」
  ズザシュッ!
  ランドウォームが真っ二つに裂ける。一体、これで何匹めのモンスターを倒したか。
  それほど最深部にいるわけではないだろうが、随分の魔物を倒してきたような気がする。
「ふー…」
  剣についたモンスターの体液を拭くと、鞘におさめる。そして、肩をごきごきと鳴らしてみる。
腰の調子は良さそうだ。
  ふと、振り返ると、どれくらい先か、やっと見えるくらいの所に戦士がいるのに目がついた。
  ―これで3人目…。
  クロス洞穴に入り込んでいる戦士はアシュトンだけではない。もう、先を越されてしまっただろ
うか。
  そんな事を考えながら、アシュトンは洞穴内部探索を再開した。
「…え?」
  ほどなく先の曲がり角から、閃光が走り、そしてすぐに消えた。
「……紋章術の光…?」
  紋章術士がいるのだろうか。アシュトンは少し好奇心を出してそこの角を曲がった。
  ボシュボシュッ!
  見た事のある女が見た事もない筒から光を連発させていた。どうやら、あのヘンな筒なみたいな
ものから、紋章術の力が出ているようなのだが、あんな紋章術見た事がなかった。
「なんなのよ、ここ!  もう、化け物だらけじゃない!」
  この声には聞き覚えがあった。
「オペラさん?」
「えっ!?」
  オペラはビックリして振り返った。まさか、お互いこんなとこで再会するとは思ってもみなかっ
たのだ。
「あ…、アシュトン?  どうしてこんな所に…」
「オペラさんこそ…」
  アシュトンはひょこひょことオペラに近付いた。なにより、彼女が手にしているヘンな筒のよう
な、見知らぬものが気になったのだ。
「……言ったでしょ?  私、人を探してるって。その人がここにいるかもしれないっていう情報を
聞き付けてね。ここにやって来たんだけど…」
  この様子では見つけていないらしい。
「…そうですか…。あのー、それで、その、手にしているものは何ですか?  紋章のかかった、武
器か何かなんですか?」
「あっ……と…、えーと、これは〜、そのー…」
  オペラは焦ったように、言葉をにごす。そんな彼女に、アシュトンは不思議そうな顔をした。
「ま…、まぁ、そうね…。ランチャーって言ってもわからないわよねぇ…。あの、銃って、知って
る?」
「ジュウ?  なんですか、それ」
「やっぱり知らないかぁ…。うーん、どう説明しようかなぁ…。と、ともかく、紋章術を駆使した
武器なのよ」
「……そうなんですか…」
  紋章術には、アシュトンも少なからず以上に興味はある。紋章術と剣術を組み合わせた紋章剣を
使っているのだから、当然だ。
「でも……、そんな武器、聞いた事もなかったですよ。どこで売ってるんです?」
「ああ、これは私の手製だから、どこにも売ってないわよ」
  ちょっと誇らしげに、オペラはランチャーを肩にかける。
「そうなんですか…」
  アシュトンはのなおも興味深げに、オペラのランチャーを眺めている。
「それで?  アシュトンはなぜここに来たの?」
「え?  あ、はぁ。ここになんか化け物が出るって言うんで、腕試しも良いかなって…」
「へー………」
  オペラは意外そうにアシュトンを見た。気弱そうだし、腕試しなんかできそうにないと勝手に決
めつけていたオペラは内心ちょっとビックリしたのだ。
「腕試しなんて、随分威勢の良い事するのねー」
  オペラが歩き始めたので、アシュトンもなんとなく彼女に続いて歩きだした。
「でも、一応戦士だし…、腕は磨かないと…」
「あなたが言うと説得力が全然ないわね」
  振り返らずに、オペラがキッパリ言い切った。
「…そ、そうですかぁ…」
「そうよ。そんな口ごもった口調で腕を磨く、なんて言われてもねー…」
「…………………」
  なんだか、心にグサリと突き刺さって、アシュトンは何も言えずにうつむいた。
「…ん…?」
  近付いてくる殺気に、アシュトンは顔をあげた。オペラはそれに気づいていないようで、まだ何
か言っている。
「危ないっ!」
  とっさにアシュトンはオペラを突き飛ばした。
  どんっ!
「きゃああっ!?」
  背中をいきなり突き飛ばされ、オペラは前につんのめった。
「な、なにすんのよ!?」
  思わずひざまずき、オペラは怒りの表情で振り返った。が、すぐにモンスターがすぐそこにいる
事に気づいた。
  アシュトンは剣を抜き放ち、さっきとはまるで別人の顔つきで、モンスターへと切りかかる。
「でぇい!」
  2本の剣を自在に操り、アシュトンは戦士風のモンスターを切りつける。
  ザッシュ!
  モンスターの肩から切りつけ、モンスターはがっくりと倒れた。おそらく、もう動かないだろう。
「…ふう…」
  一息つくと、アシュトンはまたもとの表情に戻った。
「………あんた、戦士って本当だったのねー」
  オペラがゆっくりと立ち上がりながら、アシュトンに話しかける。
「……なんだと思ってたんですか?」
「だって、戦士ってなんか、マッチョで汗くさそうじゃない?  油でてかってるっていうか。私は
そーいう男好かないんだけどさ。あんたってば、そんな雰囲気全然ないんだもの」
  ドレスについた土を手ではらい、オペラはアシュトンを見た。
「はぁ…」
  どういう意味として受け取ってよいものかわからず、アシュトンはとりあえず返事をした。
「でも、いきなり突き飛ばす事ないじゃない。せっかくのドレスが汚れちゃうわ」
「……そもそもそんな格好でここに来る事自体間違いなんじゃあ…」
「何か言った!?」
「あ、いえ、なんでも……」
  オペラが目を吊り上げて振り返ったので、アシュトンはあわてて首をふった。
「あ、あの、ところで、オペラさんが探してる人ってどんな方ですか?」
  本当のところ、さしたる興味もなかったのだが、とにかく話題を変えようと、アシュトンは話を
オペラにふる。
「え?  うん……。私の…恋人なんだぁ…」
「そうなんですかぁ」
  オペラの表情が甘くなり、わずかに頬が赤く染まる。どうやら、よっぽど惚れこんでいるらしい。
  この人でもこんな表情するんだと、アシュトンも感心してオペラを見る。
「エルネストって言ってさ。素敵なのよ。クールで知的で…。そんでもってセクシーなの」
「ヘぇー…」
  一体、どんな人であろうか。どうやら、彼女と同じに額にもう一つ目があるらしいが。
「うちのトコじゃけっこう名が知られてるのよ。考古学者でね。けっこうモテちゃってさー。ライ
バルだって………」
  それから延々ノロケに近い彼氏の自慢をされて、アシュトンもいいかげん聞いていなかった。
「…そういえば、エルらしき男がここにいるって噂を聞いたけど、あんた、見なかった?」
「え?  え、あ、いいえ」
  いきなり、オペラが振り返ってきたので、アシュトンはビックリしてあわてて首をふった。
「そっか…」
「額に目をもつ男なんて、この星にはいないはずなのよね…」
「…………額に目…、ですか……」
「そうよ。額に目を持つ男って言ったら、やっぱりエルしか考えられないと思うのよ」
「……………………」
  なにか、心に引っ掛かる。アシュトンは首をかしげ、なにが引っ掛かるのか考えた。
「…どうしたの?  なにか、心当たりでもあるの?」
「……あのー、その額に目の男って、本当に男の人なんですか?  ただ、額に目をつけたヤツ、と
か、そんな情報じゃなくって?」
「…………あら…。そういえば、男とまでは言ってなかったような…」
  アシュトンの指摘に、オペラもはたと考え込んだ。額に目があるヤツ、という表現でオペラは男
だと思い込んだが、本当に男なのであろうか。
「…でも、ヤツ、なんて普通男に使われるんじゃなくって?」
「そうとも限りませんよ。例えば……」
  言いかけて、アシュトンは口をつぐんだ。自分たちが進もうとしている先の方から、なにか、不
穏な空気が漂っているような気がするのだ。
「…どうしたのよ?  アシュトン」
  オペラは怪訝そうな顔で、彼の顔をのぞき込む。薄暗いせいで、細かい表情まではわからない。
  ………来る……!
  そこいらのモンスターとは、別段強い力を持つモノが来るのだ。さっきから、妙にモンスターが
減っていたのはこのためだったのだ。この奥にいるヤツを恐れて、モンスターたちはここらへんに
いなかったのである。
  そいつが、こっちに向かって来るのだ。
「……オペラさん…」
「…なによ」
「ここは、ちょっと…ヤバイかも…」
「え?」
  言われて、オペラも初めて背後のただならぬ気配に気づいた。アシュトンがにらみつける先に、
確かに何かが来るのだ。
「…僕は腕試しでここに来たんです。なにか、化け物が出るって言うんで。その、化け物って言う
のが、額にキャッツアイをつけたヤツなんだそうです…」
  ゆっくり言いながら、アシュトンは剣を鞘から抜き放つ。気のぬけない相手が、この先からやっ
て来る。
「………それって…、まさか……」
「こいつが、そいつかはわからない。けれど…、油断できない…」
「…そう…。じゃ、私も協力させてもらおうかしら」
  そう言って、オペラは例の手製武器を持ち出して、肩にかけた。
  フーッ…  コーッ…  フーッ…  コーッ…
  聞き馴れない息遣いがだんだんと近づいてくる。オペラはゴクリと喉を鳴らした。
  そして、二人は見た。暗闇の中、三つに光る目を。
「………エル…?」
  眉をしかめ、オペラは暗闇の三つ目に話しかける。
  ……来るっっ!
  アシュトンはぐっと身構えた。
「グワオウッ!」
  突然、暗闇の中からヤツが飛び出してきた。
  二人はとっさに左右に別れて避ける。
  その真ん中を通り過ぎ、それからすぐにヤツは振り返った。
  猫のような光る瞳に、額のキャッツアイ。まるで三つ目のような容姿。体型は人型で、全身焼け
ただれたような赤い皮膚に覆われ、わずかに毛を生やしている。図体はかなり大きい。
「うわ……、気持ちワルーイ…」
  眉をしかめ、オペラはこの怪物を見た。一瞬でも恋人と間違えた自分が悲しくなった。
「ギャオウッ!」
  久しぶりの獲物であるらしく、怪物はすぐに襲いかかってきた。
  うそっ!
  心の準備がまだできていなかったオペラはこの突然の事に対応できず、立ちすくんだ。
  差し迫ってくる怪物に、オペラは背筋に凍るものを感じた。
  よ、避けなきゃ…!
  だが、そう思ってはいても、なぜか体が動かない。完全に足がすくんでいた。怪物が鋭くとがる
ツメを振り上げた。
  だめっ!
  一瞬、オペラは目を閉じた。
  ガキィンッ!
  なにか近くで激しくぶつかる音がして、それから、剣のふるう音、怪物の呼吸が聞こえる。
「……………?」
  恐る恐る目を開けると、アシュトンが怪物と戦っていた。
  そういえば、彼もいたのである。
  二本の剣を巧みに扱い、怪物と互角に戦うアシュトン。このまえの情けない彼とは同一人物とは
とても思えない。
「でぇやぁっ!」
  ズパッ!
  一瞬のスキをつき、アシュトンの剣が怪物の腕を切り落とした。
「ギャアアオウッッ!」
  その痛みに、怪物はもだえ、目茶苦茶に暴れ始めた。
「ったっとととっ!  わわわっ!」
  怪物の目茶苦茶な暴れぶりに、アシュトンは慌てて跳び退った。動きが不可解になり、怪物の動
きが読めなくなったのだ。
「グァオウウッ!」
  どぶんっ!
「うわっ!?」
  振り回した腕がアシュトンに当たり、彼はそこの岩壁にたたきつけられた。
  ズガッ!
「アシュトン!」
  岩壁をずずずっとずり落ちる。
「っくー………」
  痛かったのだろう。アシュトンは涙目で後ろ頭を手でおさえた。
「ギャアッ!」
  怪物は目をらんらんと光らせて、憎しみの目でオペラをにらみつけた。この痛さをオペラのせい
とでも思っているらしかった。
「ふんっ!  さっきのようにはいかないわよっ!」
  ランチャーをかまえ、オペラは怪物に照準を合わせる。
「フレイムランチャー!」
  ごっ!
  炎弾がランチャーの銃口から発車され、まともに怪物に当たる。
  ドゥンッ!
  火が怪物を包み込む。オペラの口元に笑みが浮かんだ。その刹那。
  火をものともせずに、オペラに突進してくる怪物の姿が浮き上がった。
「キシャアアッ!」
「効かない!?」
  オペラは驚いて、わずかに後ずさった。
「…くっ…、なら、これでどうっ!?」
  突っ込んできた怪物をよこに避けて、ランチャーの先端についた重りで、怪物を殴りつける。
  ガッ!
「ギャッ!」
  わずかに悲鳴をあげ、怪物はたたらをふむ。そのスキにオペラは急いで怪物から離れる。
「いたかったー……」
  やっと復活したアシュトンが、頭をなでながら、オペラのそばにやって来た。
「来るわよっ!」
「わかってるよ」
  剣を握り直し、アシュトンは方向転換している怪物を見据える。そして、アシュトンも攻撃に出
た。「ギャアウッ!」
「うらあっ!」
  ガッキィンッ!
  アシュトンの剣と怪物のツメが激しくかちあう。ぎりぎりと鍔ぜり合いがはじまる。
「でやぁっ!」
  アシュトンが力で押し切り、怪物を押し戻した。バランスを失い、よろける怪物。
「フォトンプリズンッ!」
  そこへ、オペラのランチャーの銃口から特殊な光弾が発射され、怪物を包み込んだ。
「ギャッ?」
  この、まとわりつく光りは何か。怪物は、自分が今、おかれている状況を把握できなかった。
「……え?  え?  え?  な、なにしたの?」
  アシュトンの方もオペラが何をやったかわからなくて、オロオロしだした。
「今、動きを止めてるのよっ!  はやく、ケリつけてよっ!」
「あ、う、うんっ!」
  動けない敵を攻撃するというのに、やや気がひけるようだが、そんなこと言ってられないという
のもわかっているので、アシュトンはゆっくり剣をかまえた。
「……クロスラッシュッ!」
  ズザズザシュッッ!
  華麗な剣の動きが、怪物を四つに断った。
「ギャアアアアアアアッッ!」
  すさまじい断末魔をあげ、怪物はこときれた。
「……………ふぅー……」
  二人はそろって安堵の息をついた。そして、それぞれの武器を下げる。
「はぁ…。やっと終わった…」
  剣を鞘にしまい、アシュトンは名も知らぬ怪物を見下ろした。
「この、洞窟って、こんなのがうようよいるのかしら?」
「…そんなことないと思うけどな…」
  オペラは怪物の死体に近づいて、ちょっと調べてみた。
「これ…、本物のキャッツアイかしら……」
  かがんで、指先で額の目に指を押し当ててみた。
  じゅぷ。
「………………………」
  どうやら本物の目であったらしく、目から白い液体が流れ出て、オペラの人差し指にかかる。
「や、やだっ!  触っちゃったっ!」
「うえええ!  僕の服でふかないでよっ!」
  なにはともあれ、戦いは終わったようであった。

                                             ☆

「はぁー…。太陽がまぶしいわー」
  久しぶりに感じる陽光に、オペラは目を細め、そして大きく伸びをした。
「やっぱり、こーいう時に有り難みってもんを感じるわねー。あんなジメジメしてる所ばっかりじ
ゃ健康にもよくなさそうだものね」
「へー、オペラさんでも、健康に気を使うんですねー」
「なによ、そのでもっていうのは…」
「……あっ…いや…その、…あ、オペラさん、オペラさんは、これからどうするつもりですか?」
  アシュトンは慌てて、話題を変えた。
「…え?  …うん…。やっぱり、情報量の多いとこに行くつもりよ。港町とかを、まわってみよう
と思ってるの」
「…そうですか…。じゃあ、クリクや、ハーリーとかに向かうんですね」
「そうね。そのつもりよ。アシュトン、あなたは?」
  オペラが逆に尋ねてきたので、アシュトンはちょっと驚いた。
「僕ですか?  ……そうだなぁ…。…確か…、サルバ坑道でも、なにか起こってるみたいなので、
そっちに行ってみようかと思ってます」
「そっか…。じゃ、お別れね」
「そうですね」
  アシュトンはのんきに返事をする。サルバと港町では、方向が逆だから、この場で別れる事にな
るのだ。
「…それじゃ…、元気でね」
「ええ。オペラさんも。頑張ってその…エ……エルー…、エロ?  ゲー…、ゲロ…なんとかさんを
見つけてくださいね」
「…………………………」
  オペラは無言でアシュトンをにらみつけた。
「あっ…、あの、その…、なんてゆーか、ええと……………。とっ、とにかく頑張って下さい!  
それじゃっ!」
  取ってつけたように頭を下げると、アシュトンは逃げるようにサルバに向かって走りだした。
「っとにぃ……」
  ハッと息をついて、オペラは遠ざかっていくアシュトンの背中をにらみつけた。
  やがて、静かに苦笑して、それからくるっと振り返ると、ゆっくりと歩きだした。

                                                                           END