「アンジェラ。眠れないんですか?」
 ベランダで、星を眺めていると、リースが声をかけてきた。
「リース…。あんたこそ、どうしたのよ…」
「いえ、ちょっと眠れないな、と思って…」
「そう…」
 そっけない返事をして、アンジェラはまた夜空を見上げる。
「星……、キレイですね…」
「そうね…」
 それから、二人は無言だった。ただ、外の景色を眺めるばかり。
「ねぇ…」
 不意に、アンジェラが話しかける。
「何ですか?」
「…アイツ……、復活すると思う?」
「………わかりません……」
 リースは複雑な気持ちで、そして正直に答えた。
「…そうよね…。わかんないわよね、そんなの……」
「…アンジェラ……」
「……私がアイツと初めて出会ったのはさ、ジャドの宿屋だったんだよ…。まだ、フェア
リーに取り付かれてない時よ。私の着替え中に間違えて入って来たの。まさか、その時は
こうやって一緒に冒険するなんて、夢にも思わなかったわ…」
 リースは最後に仲間になったから、彼らがどう仲間になったのかは知らない。だから、
こんな話も初めて聞いた。
「…それからねぇ、滝の洞窟の前でまた会ったの。ヒドイのよ。アイツったら、女の子に
あんな失礼な事しておいて、それをすっかり忘れてるんだから。ヒドイよね……。………
ヒドイよアイツ……ヒドい……ひど…ヒドすぎるよ……」
 だんだんと声が震えてきて、最後の方は言葉にならない。
「アンジェラ…」
 リースはその震える肩に手をのせて、ゆっくり背中をさすった。
 最後に仲間になったリースにとって、自分が仲間になる前の出来事はなにも知らないわ
けで、そんな所で妙な疎外感を味わった事は一度ではない。
 彼らには、他の人間が立ち入る事ができないようなものがあるんじゃないか。そんな事
を考えた事もある。いつもケンカして、ケンカして。デュランが負けるか、うんざりげに
ホークアイあたりに止められて終わる。
 リースが仲間になったその時点でもう、アンジェラはデュランを見ていた。その情熱的
な視線でもって。彼がいっこうに気づく気配がなくても、その視線を熱くしていった。
 だから、彼の死で一番ショックを受けているのはアンジェラだろう。そんな事で順位づ
けするのはおかしいとわかってはいるが。
「……死ぬかもしれない…。それは、私も覚悟してた。ううん、私だけじゃない。リース、
あんただって覚悟のうえだったでしょ?」
「ええ…」
 竜帝という、最強のパワーを手に入れてしまったヤツを相手に戦いを挑むのだ。それく
らいの覚悟はできていた。
「そりゃ、死にたくはないけどさ…。でも、しょうがないって事もあるじゃない。相手が
相手だし…。それでも、みんながいたから…、私は向かって行った…。やるからには勝ち
たいし…。…自分が死んでも、まぁ、別にしょうがないかなとは思ってた…。接近戦では
お荷物だからね。でも………でもね…。仲間が……、アイツが死ぬだなんて、考えなかっ
た…。自分は死んでも良いから、仲間だけは…、なんてこと、きっとみんな考えてたんだ
と思う…。違っても、私はそうだった…。……それが、どれだけ自分勝手な事か…、わか
んなかった…。死んで、ツライのは本人じゃない…、残された者達なんだって………」
「…アンジェラ……」
「一緒にいればいるほど、話せば話すほど、アイツの事知れば知るほど………ツラいじゃ
ない!」
 リースはギュッと目をつぶった。アンジェラの気持ちが痛い程よくわかる。
「…言いたい事がたくさんあったのよ…。たくさん…たくさん…」
「…アンジェラ…。明日、明日よ。明日、デュランにたくさん言えば良いじゃない…。ね
…?」
 泣き崩れるアンジェラに話しかけるリースの声も涙声だ。
「だって…、だって…、本当に、また…会えるか…わかんないじゃない!」
 そう。アンジェラだけじゃない。みんな何も言わなかったけれど、本当はとても不安だ
った。ヒースの腕を疑っているワケじゃない。でも、どうしても不安だった。
「そんな事言わないで…。お願いだから…。私も、そんな事もう言いませんから…」
「………………リース……」
「さぁ…、もう寝ましょう…。ね?」
 ふとすれば、崩れてしまいそうなアンジェラの肩を抱いて、リースはゆっくりベランダ
を後にした。気位が高く、お高くまとっているように見せて、とてももろいアンジェラ。
 彼女を救えるのは、彼しかいないようで…。
 涙が乾かないうちに、疲れたのか眠ってしまったアンジェラ。そんな彼女を見て、リー
スはふぅっとため息をついた。
「…デュラン…。終わったら、妹さんに会わせてくれるって…、言いましたよね…。…私
は…元気な姿のあなたと…あなたの家族に会いたい…。あなたの事の報告のために…会い
に行きたくない……行きたくないです…」
 もうずっと我慢していた涙が、今になってこぼれ落ちてきた。精神的にも身体的にも打
ちのめされ、動けなくなった仲間を見てると、リースは泣くわけにもいかず、自分に鞭打
って動き回った。しかし、明日結果が出る。それで、心の箍が緩んできているのだろう。
 自分にできる事はしてきた。あとは、文字通り神頼みしかないのだ。
 ため息をつき、リースは胸の前で手を組み合わせて祈った。これが、リースにとって最
後にできる事だった。
・
 チュンチュン…チチチ…。
 平和そうな小鳥のさえずりが聞こえる。赤い目のまま、ケヴィンはむっくり起き上がっ
た。
 よく、眠れなかったのだ。
「デュラン…」
 自分が獣人だと知っても、たいした動揺もせずに、すんなり仲間にいれてくれた。頼っ
たり、頼られたりの人間関係は、ケヴィンにとって彼らが初めてだった。
 カールがトモダチになった時も、デュランたちとトモダチになった時も。目からウロコ
が落ちるような事ばかりだったのだ。
 目を閉じると色んな表情のデュランが目に浮かぶ。デュランと一緒にしてきた他愛もな
い出来事が次々と思い出されてくる。
「デュラン…」
 もう一度をそう言って、ケヴィンは歩きだした。未だ儀式の準備をしている神官たちの
元へ行くのである。
「どう?」
「あ? はい。あと一時間程で始められそうです」
 神官達は昨日の夜遅くまで、そしてこの朝早くからこの儀式の準備にとりかかっていた。
 広い中庭の真ん中に、魔方陣が描かれている。四角を二つ組み合わせ星形をつくり、丸
で囲んだような魔方陣だ。色々複雑な文字が書き込まれている。
 やっと、準備が整った頃には、もうみんな起きて集まっていた。
「…じゃあ、始めますね…」
 ヒースが緊張の面持ちでそう言った。ふと、司祭の顔を見る。司祭は力強くうなずき返
してくれた。
 一つ、深呼吸するとヒースは魔方陣の前に立つ。魔方陣の要所要所にも幾人かの神官が
立ち、これからの儀式に緊張していた。
 魔方陣をゆっくりと眺め、もう一度深呼吸をする。そして、目を閉じて意識を集中させ
た。
 気を集中させはじめたヒースに倣い、他の神官達もいっせいに祈りを捧げはじめた。
「偉大なるマナよ…」
 朗々たるヒースの声が響き渡る。
「宇宙の根源たる源よ…、女神が司りし強大なる力よ…」
 辺りは暗くなり、魔方陣が淡い光を放ち始める。
「我が志しを捧げよう。我らの祈りを捧げよう…」
 魔方陣からの光がだんだん強くなり、不思議なエネルギーが静かに沸き上がってくる。
「我が声に応えたまえ、我らが呼びかけに応えたまえ…」
 不思議なエネルギーが風になるほどの強さになってきた。魔方陣の光から蛍のような小
さな光が浮き上がってきた。
「空に閉じたる頑なの扉、その封印を解き放て…」
 ヒースのマントがばさばさとはためく。そばにいたみんなも下から沸き上がる風に、髪
の毛をなぶられた。それに伴い小さな光が生み出される数も増えてくる。
「我が目の前にて開け、聖地への門よ!」
 コオォォォッッッ!
 魔方陣の各所に配置されたマナストーンのカケラから、一条の光が勢いよく天に昇り、
魔方陣の光はまぶしいほどの明るさに達した。
 聖域の扉の一部を具現し、転送されてくる彼を迎えるには、マナストーンのカケラだけ
でなく、神官達の力も必要だった。聖域から送られるパワーを受け止められるほどの力が。
 聖域から送られてくる力は尋常なものではなかった。この力を神官たちが受け止め、魔
方陣に停滞させなければ、この儀式は失敗に終わってしまうのだ。
「くっ、くくっ…」
 歯を食いしばり、ヒースは耐えていた。足を踏ん張り、倒れまいと気張った。
 幾人かの神官達は耐え切れず、吹っ飛ばされてしまった。
「くぅっ!」
 汗を流し、ヒースはわずかに目を開ける。この儀式の中心である自分が、一番負担が強
いのはわかっている。それだけに、ここで吹っ飛ばされて、魔方陣から外れるわけにはい
かなかった。それは、儀式の失敗を意味するからだ。
「うわっ!」
 すぐ近くの神官が耐えられずに、吹っ飛んだ。
 ……まだだ…。まだ、僕はへこたれるワケにはいかない…。へこたれちゃいけないんだ
っ!
 ヒースはカッと目を見開いた。
・
 父さん…、母さん…。俺…、来ちゃったよ…。
 両親に会ったら、苦笑して、そう言うつもりだった。
 口の中で閃光剣を発すれば、たとえ竜帝であってもひとたまりもないはず…。そして、
確かにそうだった。しかし、デュランの方もひとたまりもなかった。
 死の覚悟はあった。別に死のうと思ってやったワケじゃないけれど、あれ以外の方法を
思いつかなかったのだ。ためらえば、誰かを死なす事になっただろう。それだけは、どう
してもイヤだった。自分が命を落とす事よりも、嫌だった。
 竜帝の口の中で、形見のブロンズソードが、目映く同時に光った映像を最後に、デュラ
ンの意識は失せた。
 それから、何がどうなったのかよくわからない。気が付いたら、そこにフェアリーがい
た。ここがどこかとか、自分が浮いているとか、そんな事はどうでも良かった。
『…最後まで希望を失わないでいてくれてありがとう…』
 そう、礼をいうフェアリーは、うすく透けていて、今にも消えてしまいそうだった。
『デュラン達が頑張ってくれたおかげで、危機は回避されたよ…』
『……フェアリー……』
『でも、デュラン。あんな無茶はしないでよ。私…あなたにそんな事になってもらいたく
なかった……』
『そうは言うけどよ…、あれ以外、何も思い浮かばなかったんだ…。俺、バカだからさ…』
 フェアリーは困ったようにほほ笑んだ。
『…マナ、無くなっちゃった…。私はマナと共に消えるさだめなんだけど……』
『お、おい、フェアリー…』
『……でも、でもね…。本当に無くなっちゃったワケじゃないの…。本当にちょっと…本
当にちょっとだけ、マナが残ってる…。…私、デュランとお別れだけど…』
『ど、どういう事だ…? …そりゃあ、いつかは…そうなるんだろうけど……』
『お別れだけど、出会いでもあるのよ…』
『え?』
 デュランは意味がのみこめないまま、フェアリーの体が光りだした。光の中でフェアリ
ーが大きく成長する。
 デュランは大きく目を見開いた。さっきまでフェアリーだったのが、神々しいばかりの
光を放つマナの女神へと変化していたのだ。
『…フェアリーはマナの樹の種…。本当に信じ合える人、理解しあえる人と出会った時、
フェアリーはマナの女神へと成長する事ができるのです……』
 デュランはあまりの事に口をポカンと開け、光り輝く女神に見入った。
『……私はこれから聖域にとどまってマナを作り続けます。元に戻るまで千年以上かかる
かもしれません…。その時デュランたちの子孫が私を覚えていてくれたなら、私は目覚め
て助ける事になるでしょう。でも、もし覚えていなかったら、私はここでずっと見守って
いる事にします…』
『あ? え? で、でも、俺…』
 死んじゃったし…。続きの言葉は口に出ない。
『ありがとう、デュラン…。私…あなたに会えて本当に良かった…』
 女神はその手をのばし、デュランをそっと引き寄せた。
『女神…さま…? ……フェアリー…?』
 真っすぐ見つめ合うデュランと女神。女神のなかに、フェアリーの面影が見えた。やが
て、女神はデュランの唇にそっと口づけた。
『!?!?!?』
 驚きの連続である。もう、デュランはどうして良いかわからない。ただただ顔を真っ赤
に上気させるだけ。
『こうしてあなたと向かい合いたかった。あなたを抱きしめるには、以前の私では小さす
ぎたけれど…』
 戸惑うデュランを抱きしめて、女神がつぶやく。それは、女神の声より、フェアリーの
ものに近かった。
 デュランを離すと、彼の顔を優しくなでる。女神の顔から、どんどんフェアリーの面影
か消えていくように見えたのは、気のせいなのか。
『…さようなら…。もう二度と会う事もないでしょう。けれど、私はいつもあなた達と共
にあります。…聖剣の勇者デュラン…。あなたにマナの祝福が続くよう、ここで祈ってい
ます…。ありがとう…』
 最後にそう言って、ほほ笑みながら女神は消えてしまった。いや、デュランの方が消え
たのかもしれない。そこらへんの記憶はあやふやだった。
・
 一際、魔方陣の真ん中が光り輝いた。
 すると、魔方陣の真ん中辺りから、光の泡が現れた。それはぽこぽこと浮かんでは消え、
浮かんで消えしている。その泡の数はどんどん多くなってきた。
「あっ!」
 誰かが叫んだ。
 光の泡が上へ昇っていく中、泡の発生しているあたりが、見覚えのある人に形成しはじ
めた。あのときと同じ、白い鎧を身につけて。
 魔方陣のちょうど真ん中。光の泡の中。まるでゆっくり泡にまみれ沈んでいくようなか
たちで、人型は宙に浮いていた。
 薄かった人の姿がだんだん色濃くなってきた。光のまぶしさが失せてきた。
 みんなの顔は光に照らし出されている。その顔に、驚きと、それから喜びの表情が浮か
んでいた。
 デュランは光の中、ぼんやり目を開けた。遠くに仲間が見えた。みんな、口を開けてこ
っちを見ていた。
 みんな……。
 彼の姿がすべて現れると魔方陣の光が消え、光の泡も消えうせた。それと同時に、彼を
支える浮力も弱くなり、彼はゆっくりと大地に足を降ろした。
 光が全て消え去ると、ワッとみんなは走りだした。
 仲間のところへ歩み寄ろうとしたデュランに、五人の猛烈なタックルが彼を襲った。
「うわっ!?」
 一瞬、よろめいたが、前から後ろから横からも…。もうもみくちゃにされた。
「バカー! バカバカバカ! デュランのバカー!」
「ふええぇーん! デュランしゃあぁーんっ!」
「心配かきゃーがっておめーわっ!」
「うおおおおおおぉぉぉっっ! でゅらぁぁぁんっ!」
「良かった! 本当に良かった!」
「ちょ、ちょっと…、うわぁ!」
 泣き笑いのみんなに囲まれて、こつきまわされ、抱き着かれ、引っ張られ、ほおずりさ
れて…。
 五人に囲まれて、デュランの姿は見えなかったが、ヒースは心底ホッとした顔で、ほほ
笑んだ。
「はぁ……。良かったぁ……」
 気が抜けたか、それとも疲労がたまったのか。ヒースはその場にへたりこんだ。
・
「しっかし驚いたよなぁ。あのフェアリーがマナの女神様になっちまったなんてさ」
 フラミーの上で、ホークアイがみんなに振り返った。
「だけど、俺、目の前で見たぞ。フェアリーがマナの女神様になっちゃうトコ」
 そう言って、デュランは自分の目をさす。
「ま、ウソじゃないんだろうけどさ。それでも、あんまり信じられないわねー」
 デュランのすぐ隣で、アンジェラが言う。
「デュランしゃんはフェアリーしゃんと仲が良かったでちもんねぇ」
 そう言いながら、シャルロットは彼のひざの上に身を乗り出す。
 ここ最近、シャルロットはデュランによくまとわりついている。なついていた分、復活
の嬉しさもひとしおだったのだろう。
 もちろん、嬉しいのはシャルロットだけではない。ケヴィンもよくまとわりついている
し、ホークアイやリースはベタベタしてないだけだし、アンジェラは素直になれないだけ
だ。
「おーい、フォルセナ、見えてきたぞー」
 フラミーの頭の上で、下を見下ろしていたケヴィンが怒鳴る。
「上空から見ても、豊かな土地ですよね。今までこんなにゆっくりした気持ちで見下ろし
た事がなかったですけど…」
 リースも一緒になってフォルセナを見下ろした。
「それで? おまえんちってどのへん?」
「んーと…、あの武器屋の近く…つってもわかんねーか。下に降りたら案内するよ」
「約束だもんね! 全部終わったら招待してくれるって! 部屋も見せてくれるんでし
ょ?」
「……言っとくけど。俺の家ってのはいわゆるフツーの家なんだ。部屋だって、おまえん
とこと比べてもグッと狭いからな」
「じゃあ、ホークアイの部屋くらいまでに狭いの?」
「…おまえらの感覚でモノを言うなよなぁ」
 ホークアイがブスッたれた顔で振り返る。
 ここに来る前、色々各地を廻っていたのだが。ホークアイは自分の部屋を案内した時、
庶民感覚のない彼女たちに散々な事を言われたのだ。
「あれがフツーなんだよ」
「なぁ」
「ショミンでちねぇ」
「うるせーよ」
「妹さんがいるんですよね?」
「あぁ、まーな…」
「やっぱ、お前に似てるのか?」
 デュランに似てる妹ならイヤだなと思いながら、ホークアイが尋ねる。
「うーん。どうだろう。俺はどっちかつーと親父似だし、あいつはどっちかつーとお袋似
だし…」
「ふーん…。あ、フラミー。このへんで降ろして」
 指図されると、フラミーはゆっくりと降り立ちはじめた。
「フォルセナ、フォルセナ! そうだ、デュラン! 食い放題食い放題!」
 真っ先にフラミーから飛び降りて、ケヴィンがにこにこと振り返った。
「あー、行こうぜ。…俺も、長い間そこに行ってねぇから、まだやってるかわかんねぇけ
ど。たぶん、やってると思うんだ。人気のある店だったし」
 デュランがフラミーから降りて、シャルロットが降りるのを手伝いながら、ケヴィンに
答える。
「それじゃフラミー。用があったら呼ぶからね」
「キュウ〜」
 一声鳴いて、みんなをちょっと見ると、バァッと飛び上がった。
「じゃ、行こうぜ」
 しばらくフラミーを見上げていたが、ホークアイがフォルセナの城下町を指さした。
 フォルセナに向かって歩きながら、デュランは大きく深呼吸した。なつかしい顔が待っ
ていると思うと、心が躍ってくる。
 大地が、空が、風が、草木が…、ここの世界すべてが、平和の喜びに満ちあふれていた。








 マナの樹の根元に、小さな小さな苗…。それは、小さいけれど確かな希望がある。
                                                   E N D